米国、民主党の中でも分断「マヌケな政策、頼むから黙ってくれ」

金成隆一AERA#ドナルド・トランプ
都市部では民主党、地方では共和党への支持が強まっている(AERA 2018年12月31日-1月7日号より)
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都市部では民主党、地方では共和党への...

 トランプ政権下の米国で、様々な分断が起こっている。その亀裂は同じ党を支持する支持者たちの間にも生まれているようだ。

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 9月、ニューヨーク・ブロンクスの飲食店。中間選挙で連邦下院議員をめざす、民主党の新人女性、オカシオコルテス氏(29)の集会があった。

 全米に435ある下院選挙区の一つに過ぎないのに、オカシオコルテス氏を何台ものテレビカメラが取り囲んだ。6月の党予備選で下院ナンバー4の実力者を破って以来、全米の注目を集めてきた。ファッション誌の表紙を飾り、着ているスーツの値段まで話題になった。

 2年前の大統領選でサンダース上院議員を手伝った「民主社会主義者」。サンダース氏と同様、国民皆保険や公立大の授業料無償化、連邦雇用保障導入など革新的な政策を掲げている。

 集まった支援者も若い。学生サークルのような熱がある。

「白人男性が優勢な政界にヒスパニックの女性を送り込みたい。彼女は多様性の象徴だ」

 ヒスパニック系の学生、ジェイソン・サンティアゴさん(21)は熱心な支持者だ。

 社会主義への抵抗など「一切ない」。「貧困とは何かを理解している人に選挙区を代表してもらいたい」。母子家庭で育ち、「政府支援に依存する幼少期」だった。今も友人宅から通学し、1日1食で過ごす。

 壇上に上がったオカシオコルテス氏が声を張り上げた。

「戸別訪問が重要です。ドア越しに向き合うことで生活者の声を知る。人々がドアを怖がって開けようとしないことから、私は移民税関捜査局(ICE)が問題だと学んだのです」

トランプ政権下で、滞在資格を持たない移民の摘発を強化しているICEの問題点を指摘すると、会場が沸いた。オカシオコルテス氏は、ICEの廃止を掲げてきた。

 中間選挙後、社会主義団体「米民主社会主義者(DSA)」は声明を出した。「私たちは、長年の停滞期を経て、米国の社会主義運動の復活を示した」

 トランプ氏が当選した2016年以来、DSAに5万人近いメンバーが加わった。声明は公認の勝者リストを掲げた。オカシオコルテス氏ら連邦の議員に加え、州議会議員ら地方の政治家も含めて約40人。カリフォルニア州やワシントンDC、メリーランド州など、海岸沿いのリベラルな選挙区が大半だ。

 同じ民主党内でも、地方では全く異なる声が聞こえてくる。

 ニューヨークから西へ。アパラチア山脈を越えると、製鉄業などの基幹産業が廃れた中西部の「ラストベルト」(さび付いた工業地帯)に入る。全米に知られる「労働者の街」、オハイオ州ヤングスタウンを中間選挙の前に訪ねると、地元民主党トップ、デビッド・ベトラス委員長は懸念を深めていた。

「今の左派の振る舞いは、保守派の思うつぼだ。ICE廃止を掲げる政治家なんて大陸の真ん中では信用されない。最もマヌケな政策だ、頼むから黙っていてくれ、と言いたい」

 懸念するのは、保守派メディアが左派の主張をあたかも民主党全体のもののように報じ、警戒心をあおるからだ。代表格がFOXニュース。オカシオコルテス氏の映像を流し、「極左」「彼女は全米の人々が自分と同じ考えだと思っている」「これが民主党の将来だ」と伝えた。

 米国人の大半は、警察官や消防士ら最前線で法律を執行する人々を敬う。その一角を担うICEの廃止を掲げることには反発が起きやすい。移民の多い都市部でウケても、地方では身内の足を引っ張る、という懸念だ。

 米国では都市部と地方の分断が深まっている。調査機関ピュー・リサーチ・センターによると、1990年代末から都市部で民主党の、2009年ごろから地方で共和党の優位が強まっている。今では選挙登録した人のうち、都市部では「民主党支持」「民主党寄り」と答えた人が計62%にのぼり、「共和党支持」「共和党寄り」計31%の2倍。一方、地方では「共和党支持」「共和党寄り」が計54%で「民主党支持」「民主党寄り」の計38%に水をあけている。

 ベトラス氏は、民主党の指導者がニューヨーク州選出のシューマー氏とカリフォルニア州のペロシ氏なのに対し、共和党は南部アパラチア山地のケンタッキー州のマコネル氏と中西部ウィスコンシン州のライアン氏であることを指摘した上で、「民主党は沿岸部だけでなく、大陸の真ん中の声も聞かないと、どんどん地方で勝てなくなる」と語った。(朝日新聞記者・金成隆一)

AERA 2018年12月31日-2019年1月7日合併号

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