立体イラスト:kucci
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 相続などの実家のトラブルは、どの家庭でも起こりうる。きょうだい間だけでなく、血縁関係のない親戚も間に入ってきて揉めることもある。実家を巡るトラブルを避けるにはどうすればいいか。プロの解決策を詳しく紹介する。

【重要】親が元気なうちに確認しておきたい32のリスト

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 今、深刻な問題となっているのが「空き家の問題」だ。全国の空き家の総計は820万戸。売ることも貸すこともできず、途方に暮れるケースが増えている。

 都内の会社員の女性(38)はそんな一人。両親(ともに65歳)は18年、実家の30年ローンを完済した。と同時に、実家の補修箇所が目立ってきてリフォームか売却かで悩んでいる。兄(42)は別に家を建てていて、両親は実家は女性に譲ると言ってくれている。しかし、女性はすでに生活基盤は都内にあるため実家に戻る予定がない。

「両親は私が実家に戻るのであればリフォームするけど、戻らないなら売却して兄の家にと考えているようです。でもリフォームするときのローンは私名義になるので、正直私はそこまでの覚悟はありません」

 歴史と思い出が刻まれた家は簡単に売れない。そんな悩みを抱える人は、大手住宅メーカーや金融機関の協賛で運営する一般社団法人「移住・住みかえ支援機構」(JTI、東京都千代田区)が全国で提供する「マイホーム借上げ制度」などのサービスを使ってもいいだろう。

 紛争を避けるため、最終的に目指したいのは「親の希望や意思」を遺言書として残しておいてもらうことだ。公証役場で作り保管してもらう。残された家族にすれば親の生前の意思を確認できるだけでなく、法的拘束力もある。

 だが「税理士法人レガシィ」によれば、14年から17年に扱った相続事案のうち遺言が用意されていたのは全体のわずか10%。同社のパートナー税理士・大山広見さんによれば、遺言を書くということは「老い」や「死」を見つめることになり、死をあまり考えたくない日本人は敬遠する傾向が強いのが一因という。

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