立体イラスト:kucci
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 人生100年時代。相続や生前整理、介護など実家をめぐるトラブルは、今や他人事ではない。そこで本誌は11月、AERAネットを通じ「実家の問題」についてアンケートを実施した。「実家」「生前整理」「相続」「介護」「墓」などに、深刻な問題を抱える回答が寄せられた。

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 実家をめぐり骨肉の争いになるのは、不公平感を感じるからだ。自分が親の介護を負担して自分だけ損をしてきたなど、さまざまな感情が渦巻く。

「金額の問題ではなく、ありがとうの一言が欲しかったです」

 関東地方に暮らす主婦の女性(57)は、姉(59)に対する思いをこう話す。

 10年前に父親が、8年前に母親が病気で亡くなると、姉と相続を巡り揉めることになった。女性は空き家となった実家を、思い入れもあったのでコミュニティーの場として近所の人たちに開放したいと考えていた。が、姉は実家を処分し現金の半分をほしいと主張してきた。

 女性は実家の片づけも墓じまいも一人で行った。両親が健在な時には、病院への付き添いや実家の整理もやってきた。それなのに、処分したとしても相続が同額なのは納得がいかなかった。しかし自分が折れないと前に進まないと思った女性は、最終的に実家の土地と家を売却し、姉には売却額の半分を渡した。母親が残した預貯金も、墓じまいの費用などを差し引いて、2等分にした。姉は当然のように受け取った。

 いま女性は姉とは連絡を取っていない。二度と姉とは関わり合いになりたくないので、姉の携帯電話の番号は「着信拒否」にし、姉とは母親の一回忌以降は会っていないという。

「今は姉との縁も切れてすっきりしていますし、仮に姉夫婦になにかあってもその子どもたちの面倒を見ることはありません」(女性)

「相続」が親族間の「争続」に発展するのは、親が生きている間に家族の間でしっかり話しておかなかった場合が多い。今回、取材した中で遺言書やエンディングノートを残している人は一人もいなかった。後述するが、相続専門の「税理士法人レガシィ」(東京都)の調査では、遺言を残した人はわずか1割。

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