遠藤:単にまっすぐ歩くだけなら、棒状の義足のほうが簡単だし安全です。でも、ひざをスムーズに曲げ伸ばしできるようになれば、立ったり座ったり、階段を上ったり下りたりできるようになります。

乙武:11月の発表以降、かなりの反響がありました。でも、僕自身としては悔しい気持ちが大きい。遠藤さんはじめチームが技術の粋を結集して完成させた義足を、もっと僕がはきこなせていたらなと思うんです。プロジェクトはまだまだ続くから、長い目で見ていただけたらいいですね。

遠藤:われわれ技術チームも、試行錯誤の連続です。最終的にはAIで人間の体の動きを学習することで、生身の足と同じ感覚で義足が動くようにしたい。そこにはまだ行きついていなくて、チームで勉強しながら進んでいる段階です。それでも、乙武さんが街中を歩いていても気づかれない未来は必ず来ますよ。まずは2020年、聖火ランナーに挑戦してほしい。

乙武:まだ、7メートル歩くのがやっとだからなあ。しかも、どうやって持つの?(笑)

遠藤:義手です。もう考えてます。

乙武:遠藤さんって、すごいと思うんです。技術者としてはもちろんだけど、プロデューサーとしても。今回のこともこんなに取り上げられるとは思わなかったし。これからどうなるか、自分でも楽しみですね。

(構成/編集部・川口穣)

※AERA 2018年12月24日号より抜粋