塩澤:先ほど小口さんからキャラクターノベルのお話がありましたが、我々も、より強化しないといけないと考えています。例えば、SF文庫の『宇宙英雄ローダン』シリーズは創刊から50年近くずっと売れていて、600巻近くになります。あと弊社は、電子書籍の割合が10%を超えているんです。

吉良:比率として高いですね。

塩澤:SFのシリーズものは長くなると紙では持ちきれないから、という需要もある。どのキャラクターがどこで出てきたか調べるのにも便利です。今後は紙であれ、電子であれ、コンテンツをどう生かしていくか。最近はTシャツやトートバッグなど作品のグッズを作ったり、弊社のビルの1階にあるカフェで、ホームズやポアロにちなんだ料理を出して連日満員になったりしています。多方面からコンテンツの魅力を固めていくことが必要なのかなと思っています。

吉良:カバーを刷新するだけで全然違う読者を取り込めるのも、文庫ならではです。手ぬぐい専門店「かまわぬ」とコラボした和柄のカバーを夏目漱石、太宰治などの名作に使うと、30代、40代の女性が買ってくださる。雑貨のような感覚だと思います。やはり既刊本のメンテナンスをきちんとやって、少しでも文庫の寿命を延ばしていきたい。

長田:書店にふらっと立ち寄って浅田次郎さんの文庫を買い、その隣に並んでいた阿佐田哲也さんの作品が気になって手に取る。そんな読書体験ができるといい。今回のフェアで町の書店さんを盛り上げたいですね。

小口:文庫は小説からノンフィクションまでバリエーションが豊富で、興味のあるものを手軽に手に取れるのが魅力。シリーズものをずらっと並べる楽しみもあります。やっぱり書店に行って見るのが楽しいですね。(文中一部敬称略)

(構成/ライター・仲宇佐ゆり)

AERA 2018年12月24日号より抜粋