収録時に春樹さんが私物のアナログ盤を追加で持ってくることも(左手前)。『ノルウェイの森』の装丁はクリスマスを思わせる緑と赤で、春樹さん自身が手がけた。第3回「村上RADIO」は12月16日(日)19時からTOKYO FMで放送(撮影/AZUSA TAKADA)/12月23日(日)までradiko.jpタイムフリー機能でお聴きいただけます。http://radiko.jp/
収録時に春樹さんが私物のアナログ盤を追加で持ってくることも(左手前)。『ノルウェイの森』の装丁はクリスマスを思わせる緑と赤で、春樹さん自身が手がけた。第3回「村上RADIO」は12月16日(日)19時からTOKYO FMで放送(撮影/AZUSA TAKADA)/12月23日(日)までradiko.jpタイムフリー機能でお聴きいただけます。http://radiko.jp/

 作家・村上春樹さんのDJ番組の第3弾が放送される。今回、番組プロデューサーの声に応えて村上さんがピックアップするのは、クリスマスソング。村上さんとのエピソードや、制作の舞台裏を番組プロデューサーがつづる。

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 折しも話題になったのが、春樹さんが自筆原稿やレコードを母校の早稲田大学に寄贈・寄託するというニュース。新旧総長と並び、「笑顔で写真撮影に応じる作家の村上春樹さん」とあった。写真嫌いの春樹さんが!

「レコードが並ぶ僕の書斎をそのまま再現してくれてもいいし、学生が自由に休んだり、本を読んだりしてくれる場所になればいいな」と春樹さんは言う。自身も学内の坪内博士記念演劇博物館で戯曲を読み耽(ふけ)った。ノートいっぱいに書いた『ノルウェイの森』の生原稿、翻訳原稿、所蔵の本、半世紀にわたって集めたレコードを順次、預けていく予定だそうだ。

「ずっと探していたんだ、どこか資料を預かってくれるところを。早稲田は僕の出た学校だし、それが一番いいのかなって」

 兵庫県立神戸高校を卒業した春樹さんは1浪後、1968年に早稲田大学第一文学部に入学する。

「でも、あの頃はみんなそうだと思うけど、僕、あまり大学に行ってないんです(笑)。学生運動でロックアウトとストで授業もなかったし。そのうち学生結婚して商売始めちゃったから」

 しかし、大学時代の経験が作家・村上春樹の下地を作ったのも事実である。東京・国分寺にジャズ喫茶を開いた春樹さんがこんなインタビューに答えている。

Q 現在大学に在学中ですが、卒業はした方が良いでしょうか。

A 経験から言うと、卒業証書の表紙はメニューにぴったりです。

Q ジャズ喫茶とは一体何なのでしょうか?

A ジャズを供給する場所です。ジャズとは何か? 僕はそれは、人生における一種の価値基準のようなものではないかと思うのです。茫漠とした時の流れの中で、僕たちの人生がどんな風に輝き、どんな風に燃えつきていくのか? ジャズの中に沈みこんでいる時、僕たちはそんな何かをみつけだせるような気がするのです。(「ジャズランド」1975年8月号から抜粋)

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延江浩

延江浩

延江浩(のぶえ・ひろし)/1958年、東京都生まれ。慶大卒。TFM「村上RADIO」ゼネラルプロデューサー、作家。小説現代新人賞、アジア太平洋放送連合賞ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、ギャラクシー大賞、放送文化基金最優秀賞、毎日芸術賞など受賞。新刊「J」(幻冬舎)が好評発売中

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