クイーンが日本の少女に開けさせたセクシャリティーの扉

角田奈穂子AERA
 映画「ボヘミアン・ラプソディ」の大ヒットで再注目されている伝説の洋楽バンド・クイーン。数十年前にクイーンの虜となった女性ファンたちが、なぜそこまで彼らに心酔したのか。

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 まるでクイーンファンの同窓会だ。映画の大ヒット以来、洋楽ロック好きの40~50代の女性と会うと、初対面でも思い出話が始まってしまう。

 映画評も「ファンファーレから泣いた」「ブライアンとジョンはもはや本人!」「フレディが出っ歯過ぎ」「ロジャーの子、ドラムプレイが似てた」と、騒がしい。少女時代にレコードやテープを繰り返し聞き、歌詞を書き写し、「ミュージック・ライフ」の切り抜きを透明下敷きに挟み、うっとりしていたころと変わらない調子で盛り上がるのだ。おそるべし、クイーンの魔力と刷り込み力。

 しかし生粋のファンが驚くほど映画の人気はすさまじい。公開4週目でも動員数は落ちず、累計興行収入は33億円を超えた。サントラや往年のアルバムが軒並みランキング上位を占める。

「クイーンのファンには四つの層がある」と話すのは音楽ライターの赤尾美香さん(53)だ。1975年の初来日のころに熱狂したのが第1世代、次が80年代の洋楽全盛期、三つめは名前は知らなくてもドラマなどで曲を耳にした世代。最年少が「幼少期から親に聞かされてきた子どもたち」(赤尾さん)だ。

 なるほど。だが「ロックじゃない」だの「ヒラヒラの衣装で化粧して気持ち悪い」だの、ロック通を自認する周囲から散々ディスられてきた「初代」ファンには、今のもてはやされぶりにほくそえむ半面、「本当に魅力が分かってるの?」という疑り深い気持ちもある。

 赤尾さんもコラムで「そんなお姉様方の怒りに触れた私は、映画のヒットには、かつて男子に大好きなクイーンを揶揄された女性ファンの怨念も加担しているのではないか、と思った」と書いている。

 クイーンのメンバー、特にフレディ・マーキュリーが日本びいきだったのは有名だ。きっかけは母国の音楽評論家から酷評されていた時期に初来日し、少女たちの熱狂的な歓迎を受けたことにある。

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