藤原和博(ふじはら・かずひろ)/著述家・教育改革実践家。リクルート勤務後、民間校長として杉並区立和田中学校校長を務める。奈良市立一条高校前校長
藤原和博(ふじはら・かずひろ)/著述家・教育改革実践家。リクルート勤務後、民間校長として杉並区立和田中学校校長を務める。奈良市立一条高校前校長
いじめの認知件数は過去最多(AERA 2018年12月10日号より)
いじめの認知件数は過去最多(AERA 2018年12月10日号より)

 裏サイトに実名で悪口を書き込まれ、学校を休みがちになった娘。母親は学校に対応を求めるもまとも取り扱ってくれないという。そんな保護者を支える支援者から相談に民間校長の経験を持つ藤原和博さんが答える。

【グラフでみる】いじめの認知件数はどう変わった?

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●支援者の悩み

 学校裏サイトによるいじめで悩む中学生の保護者を支援しています。その方の娘さんは、いわゆる学校裏サイトで、実名で「きもい」「デブス」と書き込まれました。娘さんは学校を休みがちになり、保護者は担任にサイトの存在を伝えたものの、学校側の対応は、「スマホを持たせないで下さい」とクラスの保護者に周知するだけでした。結局、「家庭都合の不登校」という扱いに。いじめと学校側の対応で二重に傷ついています。

 警察にも相談しましたが、「ブス」「デブ」の書き込みでは動けず、「死ね」「殺す」「爆破する」などの言葉の記載がないと動かないという回答でした。この生徒のほかにも10人弱の実名が出ており、2人は転校、ほかは不登校や学校への行き渋りが続いています。
 ネット上のトラブルに対して、学校側に本腰を入れてもらうにはどうすればいいでしょうか。(40代女性、東日本)

●藤原さんの答え

 昔のいじめは、学校か家か、その間の「ストリート(道端)」のいずれかで起こるものでした。ある意味、わかりやすかった。コンビニの前で恐喝されたら、目撃情報も得られましたし。

 でも、学校裏サイトやSNS上のいじめは顔の見えないところで起こるから、陰湿です。学校に閉塞感があるからね。学力だって、できる層とできない層がくっきり二極化。グラフにすると「フタコブラクダ」。一方は、授業でやる内容なんて分かりきっちゃって、全然面白くない。もう一方は全然ついていけない。どっちの側も、ハケ口が欲しくなっちゃう。ネット上なら言葉は赤裸々。被害にあった子は耐えられない世界です。

 プライバシー保護の兼ね合いもあり、先生が投稿内容を全部監視するわけにもいかない。何より、担任業務に加え、現場の業務に押しつぶされそうな教員には、対策に手を回すだけの余裕が残されていません。

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