藤原和博(ふじはら・かずひろ)/著述家・教育改革実践家。リクルート勤務後、民間校長として杉並区立和田中学校校長を務める。奈良市立一条高校前校長
藤原和博(ふじはら・かずひろ)/著述家・教育改革実践家。リクルート勤務後、民間校長として杉並区立和田中学校校長を務める。奈良市立一条高校前校長
いじめ・不登校についての悩み(AERA 2018年12月10日号より)
いじめ・不登校についての悩み(AERA 2018年12月10日号より)

 不登校生徒の増加に頭を抱える現役教員の悩みに、民間校長の経験を持つ藤原和博さんが答える。

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●先生の悩み

 公立中学の教員です。今の勤務校では不登校の生徒が増え、高学年にはクラスで平均して2人以上はいます。多いクラスでは5人以上。タイプもいろいろです。先輩からの誘いなどで反社会的非行に走るタイプ。勉強や部活などに追いつけず無気力になるタイプ。いじめや家族の問題など人間関係のトラブルで学校に足が向かなくなるタイプ。この三つのタイプが同じくらいの比率でいて、クラス替えの際には人数だけでなく、不登校生徒のタイプがかぶらないように割り振りをしました。

 継続して休んでいる生徒は、1~2週間に1度のペースで家庭訪問をしますが、遠方に住む生徒の訪問は、往復の時間も入れて2時間はかかります。部活がない曜日があれば、不登校の生徒へのケアの時間に充てられるのですが、実際はその時間さえ会議や研修で埋まってしまいます。もっと地域に不登校の生徒の勉強や交流の場、保護者に対する相談や情報提供の場があれば、学校と地域が連携して不登校生徒を「みんなで」支えていけるのですが……。(30歳女性教員、静岡県)

●藤原さんの答え

 民間出身の校長として学校の現場に身を置いた経験がある立場から言わせてもらうと、いじめにしても不登校にしても、もはや社会問題なんです。学校を取り巻く地域全体で一つ一つの問題に対処していかないと、学校という装置がもう持たない。

 不登校の数は、中学校で全体の約3%。小学校では1%未満、小中合わせて十数万人なんですね。僕の感覚からすれば、よくそんな数で済んでるなと。「平均」がない時代に、皆が朝の8時半に席に着き黒板の方を向いて座っているっていう奇跡のようなことを続けているんだから。「一律」のシステムにハマらない子、悪い意味じゃなくて「合わないな」とか「積極的に今の学校のシステムが嫌だ」とかいう子が、むしろ1割程度、100万人いてもおかしくない。

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