6年生のビビシュケリアさん(14)はほかの生徒より2学年遅れている。理由を聞くと、父親が小学校の通学手続きの時期をよくわかっておらず、1年遅れてしまったのだそうだ。さらに、5年生の時に弟が生まれ、面倒を見るために留年せざるを得なかったという。地方は教育への意識が低いと言われるが、家事や子育ての役割を担う女性は特に教育を受ける機会が少ない。民家に電気は届いているものの、ガス・水道はなく、一日に何度も湧き水を汲みに行くのはビビシュケリアさんのような女の子の日課となっている。

「校舎がないと男の人に見られるのですごく嫌です」とビビシュケリアさんは言う。

「授業の途中で雨が降ったら傘をさすか近所の家々に避難して自習です。先生が一緒に来た時だけ勉強できます」(ビビシュケリアさん)。NGO国境なき子どもたちパキスタンで現地代表を務めるジャベッド・イクバルさん(38)は「地方独特の文化に加えて、校舎がないという劣悪な環境のため、この学校の出席率は著しく低いです。女子教育には親の理解と適切な教育環境が重要となってきます」と話す。同NGOではこれまで140校以上の再建に取り組んできた。現在もこの学校のほかに11校の再建を計画中だ。

「一帯一路」政策による5兆円にも上る中国の巨額投資。高速道路で移動時間が短縮され、発電所建設などでインフラが整っていく。だが、経済優先の陰で、13年間も校舎のない学校に通わざるを得ない子どもたち、そしてその学校にさえ行けない少女たちは取り残されたままだ。(フォトグラファー・清水匡)

AERA 2018年12月10日号