ゴーン容疑者が勾留されている東京拘置所(東京都葛飾区)。東京地裁は11月30日、12月10日までの10日間、勾留を延長すると決定した(撮影/写真部・小原雄輝)
ゴーン容疑者が勾留されている東京拘置所(東京都葛飾区)。東京地裁は11月30日、12月10日までの10日間、勾留を延長すると決定した(撮影/写真部・小原雄輝)

 カルロス・ゴーン容疑者が弁護人に選んだのは、8代前の東京地検特捜部長だった。挑むのは現在の「検察のエース」。先輩と後輩が司法の場で相まみえる。

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 その時が来たのか。

「国民が不公正、不公平と思うような事件を手がけたい」

 2017年9月、東京地検特捜部長に就任した際、そう抱負を話したのは、日産自動車前会長カルロス・ゴーン容疑者逮捕の指揮をとった森本宏氏(51)だ。

「検察トップ、検事総長への出世コースである法務省刑事局総務課長の経験者です。大金星から遠ざかる特捜部を立て直すために現場に戻った検察のエース。特捜検事としても、副部長時代に猪瀬直樹・元東京都知事が関与した医療法人・徳洲会グループをめぐる公職選挙法違反事件を指揮するなど、現場での評価も高かった」(特捜部関係者)

 東京地検特捜部は政治家汚職、脱税、経済事件などを独自に手がけ、「日本最強の捜査機関」とも呼ばれる。ゴーン容疑者の弁護につくのは8代前の東京地検特捜部長、大鶴基成弁護士(63)。こちらも部長を務めた05年4月~07年1月に旧ライブドアの粉飾決算事件などの重要捜査を指揮した「元エース」だ。

東大法学部卒のエリート。堅物と言われるほど真面目で、仕事熱心だった」(同関係者)

 両氏を知る、元東京地検特捜部副部長で元衆院議員の若狭勝弁護士は2人をこう評した。

「大鶴氏は冷静に証拠分析をしていくタイプ。対する森本氏は情熱的に、突き進んでいくタイプ。自分に自信があり、自分の主張は決して曲げない」

 そんな対照的な新旧特捜部長が法廷で対決する。焦点は、有価証券報告書に役員報酬を約50億円少なく記載した容疑だ。ゴーン容疑者は毎年日産と文書を交わし、そこには年収総額を約20億円と明記した上で、その年に受け取る約10億円、退任後に受け取る約10億円と分けて記載されていた。ゴーン容疑者は「将来の支払いは確定しておらず、記載義務はない」と違法性を否定しているという。

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新旧対決はどう進むのか?