で、冒頭の「ウンコ」である。私には「金が欲しい」という人並みに卑しい気持ちがあるのに、その欲望を正面から見据えることなく横目で意識してはなんとなく流す。仕方なく労働し、対価を得て、小さく負けない程度の消費をし、満足らしきものを得る。それと冒頭の「ウンコ」はよく似ていると思うのだ。良いウンコをするためには、良い食事をせねばならず、良い生活をしなくてはいけない。業界から嫌われたくないからと、やれ接待だなんだと、言い訳ありきの不摂生ばかりしていては良いウンコなど出来るわけがない。

 経済は身体の縮図だと考えてみたい。こんなケツの穴の小さな私でもたまにはとても綺麗なウンコをする時がある。そんな時私は「実は私この一発のウンコのために生きていたのでは……」と感慨に耽(ふけ)る。「自分」という実存など取るに足りないもので、実は「自分」という存在は単なるウンコの通り道でしかないのではないかと。

「金は天下の回り物」というが、「自分はウンコの通り道」と思いたい。そして、良き欲望を良き金に変え、その良き欲望の結果を循環させよう。金の便秘が一番良くない。

※AERA 2018年12月3日号

著者プロフィールを見る
マキタスポーツ

マキタスポーツ

マキタスポーツ/1970年、山梨県生まれ。俳優、著述家、ミュージシャンなど多彩な顔を持つ。子供4人。スポーツ用品店だった実家の屋号を芸名に。著書に『すべてのJ-POPはパクリである。』ほか。映画「苦役列車」でブルーリボン賞新人賞受賞。近刊に『越境芸人』(東京ニュース通信社)。『決定版 一億総ツッコミ時代』(講談社文庫)発売中。

マキタスポーツの記事一覧はこちら