撮影/写真部・小山幸佑
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 コミュニケーションを深める場でもある飲み会。しかし正社員と非正規が一緒に働く現代では、さまざまなゆがみが表面化する場でもある。正社員、非正規それぞれが抱える思いとは。

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 丸の内にあるメガバンクで派遣社員として働く女性(42)は、正社員との待遇の格差を感じるたびに傷つくという。

 例えばインフルエンザの予防接種。正社員は社内の診療所で業務時間内に1千円で受けられるのに、派遣社員は休みをとって全額自腹で受けに行かなければならない。感染後に受診したほうが安いから、予防接種なんて受けなくなった。社員食堂のある別のビルに入館するときも、IDカードで通過するフラッパーゲートが派遣社員は開かず、警備員に声をかけないといけない。こんなふうに職場では格差を感じる場面を日に何度も突き付けられるのに、「飲み会でコミュニケーションを円滑に」とか「職場が一丸となる」なんて幻想だと思う。

 福岡県内で働く派遣社員の女性(50)も言う。

「職場の飲み会なんて、溝が深まっていくばかり。絶対行きたくない」

 都内の事務管理会社で事務職として働く契約社員の女性(41)は11月中旬、断りきれずに職場の飲み会に出た。正社員たちは来年の大型連休の話題で盛り上がっていた。こちらは大型連休は手取りがどれだけ減るのだろうと気が気でないというのに。彼らとは住んでいる世界が違うんだなと、スクリーンに投影される映像を見ているような気分でその様子を眺めていたという。

 階級・社会階層論の専門家で『居酒屋の戦後史』など酒文化に関する著書もある橋本健二・早稲田大学人間科学学術院教授(59)は、社会の階級構造の変化を指摘する。

「21世紀に入って非正規雇用の労働者が増え、正規雇用との間に大きな所得格差が生まれて新たな下層階級が出現しました」

 橋本さんはこの下層階級を「アンダークラス」と呼ぶ。

「『アンダークラス』の非正規労働者たちは正社員のように同期や上司との強いつながりもなく、所得も低いため、職場の飲み会はもちろん、プライベートでもほとんど飲みに行かない」

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