歌川たいじさんは原作でゲイを公表している。が、映画にその部分は描かれない。

「本作を“母と子の映画”にしようと決めたときに、セクシュアリティーの問題まで盛り込むのは欲張りすぎだと思った。なので、そこはカットする決断をしました。これはタイジと光子のどちらもが、成長していく物語なんです」

◎「母さんがどんなに僕を嫌いでも」
漫画家・歌川たいじの同名コミックエッセーを映画化。太賀と吉田羊の演技も見どころだ。全国公開中。

■もう1本おすすめDVD「ANNIE/アニー」

 大人は子どもによって成長する。そして悲惨な状況も、視点と描き方で希望の物語になる。こちらは1970年代に生まれ、ヒットを続けるミュージカルを、現代にリメイクした作品。

 ニューヨークの孤児院で暮らす10歳の少女アニー(クワベンジャネ・ウォレス)。孤児たちに“いけず”をするミス・ハニガン(キャメロン・ディアス)につらく当たられてもいつか本当の両親に会える日を夢見て毎日を過ごしている。ある日アニーは街でIT長者スタックス(ジェイミー・フォックス)と出会う。子ども嫌いのスタックスだが好感度アップのためアニーと交流することを思いつき──?

 大人の都合に利用されるいたいけな子ども、という定型に収まらず、実はアニーもけっこうしたたか。そこに年相応な無垢さが同居する。そんなアニーの魅力に、スレた大人たちの心も思いがけず動かされていく。名曲「TOMORROW」の高揚やダンスシーンの楽しさに、パッと気持ちが明るくなるはず。

◎「ANNIE/アニー」
発売・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
価格1280円+税/DVD発売中

(ライター・中村千晶)

AERA 2018年12月3日号