入社9年目の大間さんは営業時代の話に。

「この間、エンジニアから『昔はどんなふうに営業してたんですか』と聞かれてさ。その頃、エンジニアがつくった製品の価値は俺ら営業がバンバン売って証明するんだと思ってた。電話でアポイントを取る部隊がアポを取ってくれば、『こいつが頑張ったから絶対決めてやる』と思うし。仕事は1人でやるもんじゃなくて、つながっている。社内の信頼関係が強いほど会社は強くなると思う」

 聞いていた寺田さんは「目を開かされた」と感動した様子。アポ取りをしながら、電話など迷惑なんじゃないかと悩み、やりがいを見いだせなかった時期もあった。社内の仲間にきちんと目が向いていなかったことに気づかされたという。

 Sansanは各企業に埋もれている名刺を共有することで新しい出会いを後押ししている。Know Meもその信念を体現し、たくさんの出会いを生みだしている。

●アラン・プロダクツ

 毛髪に悩む人向けに情報発信する「ヘアラボ」、性の多様性を尊重する社会を目指す「Palette」など、特定の課題やニーズに特化したネットメディアを運営するアラン・プロダクツでは、毎月第2か第3金曜日の夜、「アランバー」と称する飲み会を社内で開いている。

 11月16日も午後6時すぎから、オフィスフロアの一角で鍋料理の準備が始まった。執行役員の新藤裕介さん(35)が冷蔵庫から材料を取り出し、白菜やネギを切って鍋に放り込んでいく。中華だしの利いた台湾風鍋だ。カウンターには缶ビールや缶チューハイ、日本酒が並び、その隣には大きなホールケーキが二つ。プシューと缶を開けて飲み始めている社員もいれば、すぐ隣に置かれた卓球台で遊んでいる社員もいる。

 一度帰宅し、4歳と1歳の息子たちを連れて現れたのは横山範子さん(38)。途中から別の企業に勤める夫の昇一さん(49)も合流した。……えっ、会社の飲み会に子ども? 夫?

 新藤さんによると、アランバーは、社長と役員が従業員とその家族や取引先の方々をもてなし、感謝の気持ちを伝える場なのだという。

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