――フリーの公式練習で4回転ループを転倒した際に、右足首をねんざした。

オーサー:結弦はロシアに着いてからも好調でしたが、ただし4回転ループというのはどんなに好調な時でもタイミングがわずかに違うだけでミスをするジャンプです。結弦は4回転ループの成功にかなりこだわり、朝の練習ではちょっと慎重に跳んで、回転不足で転倒しました。

――本番では、右足で踏み切る4回転ループを回避するなど、ジャンプ構成を変更した。

オーサー:ホテルに戻って治療後、結弦とミーティングをし、右足に負担がかかる4回転ループや3回転ルッツは入れないなど細かい相談をし、最終的に結弦が決めました。本番では4回転を三つとも決め、結弦の精神力の強さを見せました。あの時に出来る、最善の選択肢であり、最高の演技でした。

――全治3週間という見立てもあり、グランプリファイナル、そして全日本選手権の出場が危ぶまれる事態になった。

オーサー:けがの程度にもよりますが、おそらくトロントで治療することになるでしょう。結弦はチーム・ブライアンの一員として、居場所を持っています。痛みやけがの程度は結弦にしか分からないので、自分のペースで練習が出来る環境が良いでしょう。

――けがからの復帰、そして今季の計画は?

オーサー:けがの程度がまだ分からないので、明確な時期はまだ言えません。しかし一つだけ言えるのは、結弦は必ず蘇(よみがえ)るということ。これまでも、けがや病気から何度も復活し、その度に更に成長してきました。けがという逆境は、結弦のモチベーションになるはずです。それにフリーは、憧れのプルシェンコのように演じたいという情熱も加わり、魂をこめて練習していました。トロントで見せていたあの素晴らしいフリーの演技を、ぜひ皆さんに見てほしい。結弦もそう願っているはずです。

――4回転アクセルへの挑戦は、先送りになるのだろうか。

オーサー:けがから復帰した後のモチベーションの一つに4回転アクセルはあるでしょう。今回のけがは右足で、アクセルは左足で踏み切るジャンプです。ですからリハビリが終われば練習できるでしょう。私は現役時代「ミスター・トリプルアクセル」と呼ばれましたが、結弦が「ミスター・クワッドアクセル」になったら素敵ですね。結弦が必要とするならばアドバイスもしていきたいですし、彼の夢を応援したいと思います。

(ライター・野口美恵)

※AERA 2018年12月3日号