企業は個人情報を「宝の山」と見て、収集しようと手ぐすね引いているのだ。

 キャッシュレス化の進展で、お店の会計がスムーズになるなど、暮らしが便利になるのは確かだ。しかし個人情報保護という観点から見た場合はどうか。

 キャッシュレス決済の道具となるスマホには、私たちの日々の活動のほとんどすべてが記録されている。総務省によれば、日常の中でスマホに蓄積されていく利用者の情報には、主に次のものがあるという。

 通話履歴、位置情報、契約者・端末固有ID、電話帳データ、電子メール、映像・写真情報、ネット閲覧履歴、SNSの利用履歴、アプリ利用情報、ゲーム利用情報、店舗検索情報、商品購入履歴。

 加えてスマホ上でサービスを提供する各事業者が、氏名・住所・生年月日・年齢といった契約者の個人情報を有している。

 今は規制によって歯止めがかけられているが、契約者名による名寄せが可能になったら、個人は「丸裸」にされるに等しい。

「過去数年、フェイスブック(FB)が不正なことに使われるのを防ぐために十分なことをしてこなかった。間違いだった」

 5月22日、欧州議会を訪れた米FBのマーク・ザッカーバーグCEO(最高経営責任者)は、そう謝罪した。

 FBをめぐっては、2016年の米大統領選で利用者の情報が英国の選挙コンサルティング会社に不正に流出。これがトランプ氏に有利に働くように活用された可能性があると発覚し、厳しい批判を受けた。

 FBに加え、グーグル、アップル、アマゾンの「GAFA」と呼ばれる米国の巨大IT企業4社が、個人情報を集めすぎているのではないかという批判の声が、主に欧州で高まっている。

 彼らはどれくらいの個人情報を集めているのか。アカウントを持っていれば、グーグルが保有する自分の情報を開示できる。試してみたところ、メール送受信や検索の履歴は予想通りとしても、訪れた場所の位置情報など、驚くほど細かい行動データが残されていた。5年前の13年6月15日には、羽田空港にいたとわかる。手帳で確認してみると、たしかに地方での講演に出かけた日だった。私はグーグルに監視されていた!? そんなことを考えてしまうくらいだ。(消費生活ジャーナリスト・岩田昭男)

AERA 2018年11月26日号より抜粋