小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『歳を取るのも悪くない』(養老孟司氏との共著、中公新書ラクレ)、『幸せな結婚』(新潮社)
小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『歳を取るのも悪くない』(養老孟司氏との共著、中公新書ラクレ)、『幸せな結婚』(新潮社)
希望する人が誰でも無料でワクチン接種できるといい (c)朝日新聞社
希望する人が誰でも無料でワクチン接種できるといい (c)朝日新聞社

 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

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 これから感染症の季節。インフルエンザやノロウイルス、私も何度やられたことか。特に息子たちが保育園に通っていた頃は、一家で総倒れしたことも。ああ、つらかったなあ。せめてもの対策として、ワクチンは欠かさずに打ちたいものです。でも子どもを持つまでは、インフルエンザなんてひとごとでした。多分私はかからない、と思っていたのです。妊娠してからはいろんな抗体を調べまくり、出産後に水ぼうそうと風疹とはしかのワクチンを打ったものの、水ぼうそうには息子と同時にかかりました。重症化せずに済んだのはまさにワクチンのおかげです。

 現在流行中の風疹は、妊娠中に感染すると子どもが先天性風疹症候群になることがあります。いま出ている患者の中心は免疫のない30代から50代の男性。予防接種を受けていない世代が働き盛りで感染を広げているのは気がかりです。妻や家族がこれから妊娠するかもしれない人はもちろん、独身でもウイルスの運び屋にならないよう、予防接種をしてほしいもの。

 ただ、もし抗体がなくて予防接種が必要でも、数千円から1万円近くかかるワクチン代に自治体の補助が出るのは妊娠を希望している女性やその夫、または妊婦の夫に限られているんですよね。となると、ただでさえ抗体検査に行くのも手間なのに、自腹でワクチンを打とうという独身男性はいないかも。30代男性の未婚率は前半で47%、後半でも35%だから、完全にひとごとの人も多そうだなあ。

 私の家族が住むオーストラリアではこのほど風疹が根絶されました。日本はオリンピックのある2020年までに風疹を排除するとしているものの、あと2年弱しかありません。小泉進次郎さんが経団連に風疹撲滅の協力を呼びかけましたが、今後は大企業だけでなく中小企業も含めて職場での対策をしないと、開催に間に合わないのでは? 自分は妊婦とは無関係だと思っている人が、職場や近所で抗体検査と無料のワクチン接種を受けられるようにしてほしいです。

AERA 2018年11月26日号

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小島慶子

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小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。共著『足をどかしてくれませんか。』が発売中

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