なるほど、こちらも正論。まさに正論の矛と盾のぶつかり合いだ。おそらく現金派の人たちも、その側面は分かっている。実際、KDDIの今年3月の意識調査によれば、「自分は現金決済主義だ」と回答した人は4割ほどしかいない。

 残り6割は非現金でも構わないと感じつつ、現実は、キャッシュレス決済は全体の20%ほどにとどまっている。すなわち、「なんとなく、踏み切る気になれないから現金を使っている」という人が、相当数いることがうかがい知れる。そして、「ブタ財布」の持ち主も。

 たしかにキャッシュレスは便利だ。それは、頭では分かっている。でも、急速に広まりつつあるからこそ、使う人の気持ちをもう少し考えて浸透させてほしい。

 口の中いっぱいに食べ物を詰め込まれても、むせ返るだけ。咀嚼する時間や、どういった栄養価があるのかをきちんと説明しないと、日本のキャッシュレスは不健全な状態に陥りそうだ。「ブタ財布」はますます肥えていく。(ライター・我妻アヅ子)

AERA 2018年11月26日号より抜粋