BLGに通い始めて5年になるという村山さんは6年前に若年性認知症と診断され、現在は要介護3。子どもはすでに独立し、妻と2人暮らしだが、「家にいてもやることがないし、働きたい」と、週3~4回通っている。発症前は元の職場で65歳まで働き続けるつもりでいたが、断念したそうだ。

 介護保険サービスの受給者は65歳以上の人が対象だが、若年性認知症と診断された人は40歳以上ならば利用できる。要介護(要支援)認定を受けてから、デイサービスに通うなどサービスを利用することになるが、施設で行われるレクリエーションになじめない人などもいる。

 実際、村山さんも他のデイサービスを試してみたが、「のんびり遊ぶだけではつまらない」と、行き場をなくしていた。そんなときに家族がBLGを探してきた。気分の波が大きく、塞ぎ込む日もあったそうだが、BLGに通うにつれて笑顔が増えた。ほぼ毎回洗車やポスティングの作業を担当しているという。

「体はまだまだ元気だし、働きたい気持ちはあるから、仲間と一緒に仕事ができるのはいいね。わずかでもお金がもらえるのは、認められたようでうれしいです」(村山さん)

 仲間たちと冗談を言い合っては「ガハハ」と笑う村山さんの姿が印象的だった。

 2012年に開設したBLGには、50~90代の認知症の男女23人が通う。朝9時30分にミーティングを開き、その日にやりたい作業を一人ずつ聞きながら決めていく。午前中は洗車以外にも、ポスティングや買い物、昼食の準備などの作業を分担して行う。昼食はお弁当など食べたいものを購入し、BLGの事務所内か、カラオケボックスで食べるチームに分かれる。外食に出かけてもいい。午後はウォーキングをしたり、別の作業に取りかかったり。近くの小学校が下校の時刻になると、事務所の一角が「駄菓子屋さん」になり、子どもたちとふれ合う。

「仕事をするのはお金をもらうためだけではなく、地域とのつながりを持つことも目的のひとつです。認知症になったため『働きたい』という気持ちが断たれてしまっても、ここではいくつになっても『誰かの役に立ちたい』という思いをかなえられます」(前田さん)

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