子どもたちとはいつも一人ひとり目線をあわせて握手し、言葉をかわす=10月24日、第49回肺の健康世界会議の開会式の前に訪問したアムステルダムにある親子センターで (c)朝日新聞社
子どもたちとはいつも一人ひとり目線をあわせて握手し、言葉をかわす=10月24日、第49回肺の健康世界会議の開会式の前に訪問したアムステルダムにある親子センターで (c)朝日新聞社
主催者の国際結核肺疾患予防連合から「名誉会員」の称号を授与された紀子さま=10月26日、ハーグでの肺の健康世界会議で (c)朝日新聞社
主催者の国際結核肺疾患予防連合から「名誉会員」の称号を授与された紀子さま=10月26日、ハーグでの肺の健康世界会議で (c)朝日新聞社
紀子さまの歩み(AERA 2018年11月12日号より)
紀子さまの歩み(AERA 2018年11月12日号より)

 結核の予防活動への貢献で、国際団体から「名誉会員」の称号を受けた秋篠宮紀子さま。海外への初の単独訪問は実り多き学びの旅となり、未来への一歩を踏み出した。

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 6日間の「学びの旅」は、人々を癒やし、力づけた旅でもあった──秋篠宮妃紀子さま(52)の初の単身でのオランダ訪問は、謙虚に、誰からも丁寧に学んでいこうという姿が、出会った各国の人々に大きなインパクトを与えた。

「あ、昨日会った女の人だ」

 紀子さまを見つけて、金髪の女の子が声を上げた。紀子さまはかがんで目線をあわせ、

「また会ったわね。どこに泊まっているの」

 10月25日。ハーグで開かれていた第49回肺の健康世界会議(24~27日)での一場面だ。主催は国際結核肺疾患予防連合(本部・パリ)。世界の結核予防関連団体が加盟する国際組織で、紀子さまは日本の結核予防会総裁として、開会前夜の夕食会から参加した。

 この日、空いていた時間帯に紀子さまが目指したのは、結核患者への差別克服をテーマにしたシンポジウムだった。オープンスペースに、小さな半円形の階段状の座席が設置され、即席のミニコロッセオといった雰囲気だ。

 紀子さまはその一番下段の隅に、さりげなく腰掛けた。黒っぽいパンツスーツの服装も態度も自然体だから、マスコミがいなければ誰も「プリンセス」とはわからない。

 パネリストは皆、結核に感染し、克服した女性たちだ。インド、南アフリカ、と様々な国の人たちが次々につらかった体験を訴えた。

「もう一生結婚できないのではと苦しんだ」

 インドの女性はそう言って声を詰まらせた。

病気が治っても、隣には座りたくないというのが皆の本音ですから」

 今は結婚して2児の母という彼女は、「病気だったことを隠しては差別は解決しないことを学んだ」と続けた。

 紀子さまは時々メモを取りながら、最後まで真剣に耳を傾けた。その最中にも、観客は会場を出たり入ったり。紀子さまのすぐ脇に足を入れて、上の座席へとのぼっていく人もいる。予定がすべて終わり、主催者が「プリンセスへ感謝」と話すと、「えっ」と息をのむような声があがった。

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