そのモデルは、米国の大学。前日本私立学校振興・共済事業団理事長の河田悌一氏が話す。

「米国では寄付金によって設立された基金を通じて、資産を運用し、年間10%前後のリターンを得ている。投資先の半分近くはオルタナティブ商品です。イエール大学は1985年に500億円程度だった運用資産を3兆円に増やし、ハーバード大学は1千億円の資産を約40年で4兆円にまで増やしてきた」

 米国に倣えと、複数の大学が共同でオルタナティブ商品に投資する動きも本格化している。大学資産共同運用機構が昨年6月に大学共同基金を設立。前出のIBJが基金に対する投資助言を行い、投資顧問会社のGCIアセット・マネジメントが私募投信を運用している。

「日本株や先進国株、外国債券、日米リートが運用先の30%を占めるが、残りの70%はヘッジファンドへの投資です」(松田氏)

 共同基金は初年度から8%のリターンを達成。現在、玉川大学をはじめ9大学から80億円もの資金を預かって運用している。

「学納金、経常費等補助金の増額が期待できない一方で、教育研究の充実を図るために資金需要は増加傾向にあり、教育研究活動資金をより多く確保するために大学共同基金への投資を決めた」(学校法人玉川学園広報課)

 課題は大学側の意識の低さだ。

「私大だけで運用可能な資産は8兆円を超えますが、各大学の運用担当は経験のない人ばかり。おまけに『日本では米国のように寄付金は集まらない』と決めつけているため、今ある資産を『いかに維持するか』というスタンスの大学が大半。これでは、大学のグローバルな競争に勝ち抜くことはできない」(河田氏)

 運用に対する姿勢が、今後の大学経営を左右するのかもしれない。(ジャーナリスト・田茂井治)

AERA 2018年11月5日号