「私たちは必死に働いて、安くないお金を払って、安全で安心なこの場所に住んでいます。それが急におびやかされれば、拒否反応は出るでしょう」

 区への不信感を反対の理由に挙げる住民もいる。

「区が、児童相談所の設置を隠して建設計画を進めてきたことが許せないんです」

 近隣に住む女性(48)はそう話す。当初、区からは空き地には子ども家庭支援センターしか建たないかのような説明を受けていたという。区は昨年12月にも住民説明会を開いたが、女性は開催を知らなかった。

 女性が、施設に児相が含まれると知ったのは今年8月。区がホームページに掲載した記事がきっかけだった。一時保護所も併設されると聞き、不安が募った。そこで10月の説明会に出てみたが、区から満足な説明はなく、行政のこうした姿勢に憤っているという。

 住民の批判に対して、区子ども家庭支援部の保志幸子課長はこう答える。

「施設に児相が含まれることは昨年2月の区長会見以来、広報誌などでも告知してきており、決して隠していたわけではありません。ただ、説明が足りなかったというご意見があることも真摯に受け止めています。保護される方々の情報の保秘は徹底するので、DV加害者などが来る心配もありません。施設が本当に必要であることをご理解いただけるよう、より丁寧な説明をしていくつもりです」

 住民も行政も、困難を抱える子や親を助けたいという思いは共通のはず。双方が歩み寄り、溝が埋まることを期待したい。(編集部・作田裕史)

※AERA 2018年11月5日号