──今月のジャパンオープンでは、自分を信じられましたか?

 はい。自分を信じて、後半の連続ジャンプを跳べました。今回も最後の「3回転サルコウ+3回転トウループ」の連続ジャンプの前に、「跳びたくないな。サルコウだけなら100%降りられるんだけど、連続にすると足が持つかな」って思っていました。でも自分を信じて跳べたので、今後も続けたいです。

 今までは「強くいなきゃいけない」と思っていて、弱音を吐きたくなかった。トリプルアクセルが全然跳べなかった時期も、「跳べると信じている」ふりをしていました。今はその反動で、「僕の弱いところもどうぞお見せします」という感じ。元々の性格が出てきたと思います。

 子どもの頃のスケートクラブにはコーチも選手も男の人がいなくて、周りの女の人たちに「昌磨は良い子だね」と可愛がられて、良い子を演じなきゃと考えていました。実際は仲良くなると、自分からちょっかい出すタイプ。高校に入って、男子としゃべるようになりました。

──男子同士でどんな会話を?

 ゲームの話題とか……。あとは言えないような話です(笑)。

 ゲームは対人の勝負事なので、「どんな手を使ってでも勝ってやる」という一心でやります。もともと負けず嫌いなので。でもスケートは自分との戦いです。

──今季は、ルール改正でジャンプなどの質が重視されます。

 ジャンプの質が重要なのは以前からですが、もっと大事になります。プラスのための項目には、独創性とか音楽性などがありますが、結局は見た目に「お~」と思われるジャンプにプラスがつく。着氷で詰まらず、流れるようなジャンプが前提なので、意識して練習しています。

──今季の楽しみは?

 高橋大輔さんが復帰するので、試合を見に行くつもりです。人の試合を見に行くなんて、子どもの頃に浅田真央さんを見に行ったくらいかな? 高橋選手をまねしたいとかではないけど、本当に人としてもスケーターとしても「好き」なんです。

 昨季は自分が想像した以上の結果を残せて、子どもの頃には今の自分をまったく想像できませんでした。今は責任感のなかでスケートに取り組んでいるので少し大人になったかなと思います。例年よりも引き締まった気持ちで、グランプリ初戦に向かっています。

(ライター・野口美恵)

※AERA 2018年10月29日号