傍聴席から失笑も… 東電元副社長が法廷で驚きの発言を連発

添田孝史AERA
廃炉に向けた作業が続く東京電力福島第一原発。公判では、2008年に現場から提案された「最大15.7メートル」の津波対策についての判断が争点となった (c)朝日新聞社
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 東京電力の元幹部に、福島第一原発事故の責任を問う刑事裁判。「山場」とされる被告人質問で、武藤栄・元副社長は責任逃れに終始した。

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 10月16日、被告人質問の冒頭。東京電力元副社長の武藤栄氏(68)は証言台の席から立ち上がり、「大変多くの方々にご迷惑をおかけした」と、裁判長に向かって4秒ほど頭を下げた。福島から傍聴に来た人たちに尻を向けておじぎする姿は、とても奇異に感じられた。一体、誰に何をわびたのだろう。

 公判の間中、武藤氏は落ち着きがなかった。腕を前に出して証言台をつかんだり、話しながら腕を振ったりと体を動かし続けた。検察官役の指定弁護士の質問に答える時は、ときおり頬を紅潮させてもいた。

 東京地裁で最も大きな104号法廷の傍聴席は98席。一般傍聴者の抽選倍率は、16日5.8倍、17日4.5倍と世間の関心は高かった。

 東電福島第一原発事故を受け、入院患者らが無理な避難で死亡したなどとして、東電元幹部らが強制起訴され始まった刑事裁判は、2017年6月に初公判が開かれた。

 18年1月の第2回までは間が空いたが、その後はハイペースで進み、今回が30回目だ。これまで21人の証人が登場し、社内会合の議事録や電子メールなどの物証をもとに、被告人がどんな判断をしてきたか、事実を固めていった。

 そして迎えた、武藤氏への被告人質問。最大の争点は、政府の地震調査研究推進本部(地震本部)が02年に発表した長期評価に、適切に対応していたかどうかだ。

 長期評価は「福島沖でも1896年の三陸沖(明治三陸地震、死者2万1959人)と同様な大津波をもたらす地震が発生する可能性がある」と予測していた。指定弁護士側は「社内で進んでいた対策は08年7月31日、武藤氏の指示で停止された」という主張を、証言や証拠で着々と示していった。武藤氏が津波対策を先送りし、その判断が事故を引き起こしたというのだ。

「先送りと言われるのは大変に心外」

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