近畿選手権大会で滑る高橋大輔。会場には全国から多くのファンが詰めかけた。今季、観客を引き込む滑りが戻ってくるか
近畿選手権大会で滑る高橋大輔。会場には全国から多くのファンが詰めかけた。今季、観客を引き込む滑りが戻ってくるか

 4年ぶりに現役復帰した高橋大輔が、近畿選手権で初戦を戦った。結果には満足していないようだが、試合で滑る喜びをかみしめていた。

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「おかえり、大ちゃん」

 コールが会場に響き渡ったのは、10月7日の近畿選手権大会。7月の復帰宣言から3カ月、高橋大輔(32)ファンたちが待ちに待った瞬間がやってきたのだ。

「ソチ五輪のあとの世界選手権に(ケガのために)出場できなくて引退して、次に行ききれてなかったんだと思います。昨季の全日本選手権で、それぞれの目標に向けて頑張る選手の姿を見て、ふと急に、自分がやるべきことはスケートなんじゃないか、と。緊張感のなかでもう一度やってみたいと思いました」

 復帰へのモチベーションをそう語っていた高橋。今年1月から少しずつ練習を再開し、7月の会見後は本格的にトリプルアクセルにも挑んできた。しかし8月の合宿中に左足の肉離れを起こし、アイスショーは棄権。この近畿選手権の本番が、プログラムとしても、現役・高橋としても、お披露目だった。

「めちゃくちゃ緊張しました。もうスタートから足がガクガクして躓きそうになったりして。ここまでフワフワした状態は、(ソチ五輪以来)4年ぶりです」

 ショートの6分間練習が始まると、会場からは絶え間なく「大ちゃん」コールがこだました。ジャケットを脱ぎ、白い衣装が現れると、歓声が起きた。

「6分間練習なんて久々で。(アイスショーと違い)明るいなかで練習を見られるのも久々で」

極度の緊張感では、どんどん体力が奪われる。高橋の持ち味である、観客と一体化するような演技にはまだ至らず、演技中うつむく場面もあった。

「今日はファンを楽しませられませんでした。1人の世界で一つ一つこなすだけでした」

 そうはいってもベテラン。ジャンプを丁寧にこなしたことで、冒頭のトリプルアクセルを成功し、続くジャンプもすべて着氷した。演技を終え、ほっとした笑顔を見せる高橋。リンクから降り、コーチや関係者と握手をすると、得点の発表を待たずにロッカーに戻ろうとした。

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