世界一獲った「イチローズモルト」肥土社長が語る名声の秘密 (3/3) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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世界一獲った「イチローズモルト」肥土社長が語る名声の秘密

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熊澤志保,上栗崇AERA#グルメ

ベンチャーウイスキー/世界的な評価を受ける「イチローズモルト」の原酒が眠る。蒸溜所が手狭なため見学や小売りには対応していない(撮影/鈴木愛子)

ベンチャーウイスキー/世界的な評価を受ける「イチローズモルト」の原酒が眠る。蒸溜所が手狭なため見学や小売りには対応していない(撮影/鈴木愛子)

 傷ついた自然を取り戻そうとする動きから生まれた新しい名物が、メープルシロップだ。

 秩父ではかつて、セメント産業が地域の誇りだった。当時大量の石灰岩が削り出された武甲山の山肌は、見る人の目に切なく映る。「持続可能性」が産業の要に掲げられることも多い現代にあっては、なおさらだ。

 NPO法人「秩父百年の森」は10年、山を愛するメンバーが集まり発足した。副理事長の島崎武重郎さんは、秩父市の山林の約半分が戦後植樹されたスギやヒノキであることに注目し、森本来の姿を取り戻そうと、針葉樹の伐採跡に広葉樹を植樹している。

 島崎さんが特に鍵になると考えているのが、カエデ。秩父には21種類ものカエデが自生している。カエデからは、樹木を生かしたまま樹液を取り、メープルシロップを作ることができる。このシロップ事業に興味を持ち、外資系企業を辞めて飛び込んだのが井原愛子さんだ。

 秩父産シロップを使ったパンケーキなどを提供するカフェ「メープルベース」はシロップ事業の情報発信基地も兼ね、3年目を迎える。木の所有者に利益を還元するため、秩父産シロップの原価は安くない。だが、本場カナダの生産者からも「繊細で美味しい」と太鼓判を得た。

「森を育てるのは、すぐには結果の出ない、息の長い仕事」と井原さんは覚悟を語る。

 秩父市も、市有林に樹齢200年の銘木を育て、神社仏閣の補修や改築に使ってもらうプロジェクトを始動させている。

 豊かな自然と、豊かな食。秩父ではこの二つがしっかりと結びついている。(編集部・熊澤志保、上栗崇)

AERA 2018年10月15日号


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