根尾の野球選手としての魅力は、その計り知れない“のびしろ”だ。150キロの豪腕に加え、ピンチの時こそ本領を発揮する勝負勘。大振りも目立つが、通算32本塁打という長打力に加え、遊撃の守備では難しい打球を軽快にさばき、躍動感のあるプレーで魅せる。

 彼の能力が最も生かされるポジションはどこなのか。2年半追ってきても、判然としない。それは本人も同じだろう。

 かねて根尾は、「投手に専念するにしても、野手に専念するにしても、自分の意思で決定したい」と話してきた。その思いは、高校野球を終え、「プロ志望届」を提出する段階となっても変わらない。

「ただ、自分がどちらかをやりたいと思ったところで、獲ってくださる球団の考えが反対だったりするかもしれない。今は限られた時間の中でやることを見つけて……いや、もう見つかっていますけど、しっかり身体を作って技術を上げて準備したい」

 根尾にとってプロとは──。

「ミスのない世界。勝負事なので、弱い者はすぐ排除される世界だと思います」

 生存競争が待ち受ける世界で、「息の長い選手」を目指す。

「長く現役を続けられる選手というのは必然的にチームの勝利に貢献していることになる。そういう選手になりたいです」

 ドラフト会議は25日。根尾の大きな瞳は、既にその先を見据えている。(ノンフィクションライター・柳川悠二)

AERA 2018年10月15日号より抜粋