スポーツの秋。もっと速く、カッコよく泳げるようになりたいね。クロールで速く泳ぐにはどうすればいいか、最新の科学研究をもとに考えるよ! 毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された記事を紹介する。

【図】泳ぎ方・泳ぐ速さと水の抵抗の比較
【図】泳ぎ方・泳ぐ速さと水の抵抗の比較
【図】水の抵抗を小さくするのに大事なこと
【図】水の抵抗を小さくするのに大事なこと
【図】高木教授たちが開発した水の抵抗を測る装置。前から水が流れてくるプールの中で、バネを前後につけた人が泳ぐ。流れの速さは調節でき、それによって泳ぐ速さをコントロールしている。バネにかかる力を測り、計算することで、水の抵抗の大きさがわかる
【図】高木教授たちが開発した水の抵抗を測る装置。前から水が流れてくるプールの中で、バネを前後につけた人が泳ぐ。流れの速さは調節でき、それによって泳ぐ速さをコントロールしている。バネにかかる力を測り、計算することで、水の抵抗の大きさがわかる
【図】クロールの腕のかき方
【図】クロールの腕のかき方

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 水泳は、水の抵抗との戦いだ。体が受ける水の抵抗が小さければ小さいほど、手足を動かすことで生まれる「推進力」(体を前に進める力)が効率よく生かされる。つまり、速く前に進むことができる。

 水の抵抗を小さくするのにいちばん大事なことは、できるだけ体を水平に保って浮くことだ。人間の体は、水に浮くと、足のほうから体が沈んでいく。クロールで手足を動かしてもなかなか進まない人の多くは、頭が上がり足が下がって、水面に対して体が斜めになっている。この体勢だと、水を受ける体の断面積がより大きくなり、それだけ大きな水の抵抗を受けてしまう。

 クロールでは、バタ足で水を打つことで下半身が沈まないようにしている。息継ぎしないときは体を水平に保てる人も、息継ぎをすると水を飲むのが怖くて頭が上がってしまい、体が斜めになってしまう場合が多い。そういう人は、体を水平に保って息継ぎできるように努めると水の抵抗が小さくなり、それまでよりずっとラクに速く泳げるようになるはずだ。

■バタ足は水の抵抗を増やす

 クロールは手足を動かして推進力を生み出すが、手も足も同じようにパワフルに動かせばよいかというと、そうではないようだ。

 筑波大学体育系の高木英樹教授たちの研究グループは、泳ぐときに体が水から受ける抵抗を測る装置を開発して、クロールで(1)バタ足を交えた普通のクロールと(2)腕だけを使ったクロールを行ったときの抵抗を、泳ぐ速度を変えながら計測した。

 その結果、秒速1.1メートル(50メートルを約45秒で泳ぐ速さ)で泳いだときは、(1)と(2)の水の抵抗はほとんど同じだったが、秒速1.3メートル(50メートルを約38秒で泳ぐ速さ)のときは、(1)の水の抵抗が(2)よりも大きくなった。さらに泳ぐスピードを速めると、(1)と(2)の差はより広がった。つまり、主に推進力を生み出すのは水をかく両腕で、速く泳ぐときほどバタ足の動きは水の抵抗を大きくし、推進力として役立たないことがわかった。

 ということは、バタ足をしないで泳いだほうがいいのだろうか? 高木教授の答えはこうだ。

「バタ足をしないと下半身が沈んでしまうので、まったく水を打たないわけにはいきません。バタ足のないクロールは不可能でしょう」

■クロールで速く泳ぐには?

 バタ足をやめられないとすると、どういうけり方(キック)がいいのだろう? 高木教授にアドバイスしてもらった。

「足をかたい棒のように一直線に伸ばして上下にバタバタさせると、抵抗がより大きくなってしまうので、つま先から太ももまで全体がやわらかくしなるようなキックを心がけましょう。上から見て、水しぶきが大きく上がるのはダメ。ボコボコとした水の流れが、足の後ろに流れていくようなキックが理想的です」

 では、推進力を生むメインエンジンとなる腕は、どのように水をかけばいいのだろう?

「腕を真っすぐ前に伸ばし、遠くの水をつかんで手首とひじを曲げ、最初はゆっくり、だんだん加速して、できるだけ水を後ろに押すようにします。肩を中心に水車のように腕をぐるぐる回すようなかき方は、エネルギーの無駄遣いです」

 これらのアドバイスをもとに、練習してみよう! でも、自分の泳ぐ姿を見ることはできないよね。友達に泳ぐ姿勢を見てもらったり、おうちの人に動画を撮ってもらったり、よい指導者に教わったりと、誰かの力を借りるのが上達の早道のようだ。(文/上浪春海)

※月刊ジュニアエラ 2018年10月号より

ジュニアエラ 2018年 10 月号 [雑誌]

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AERA編集部
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