片山氏が「適材適所」かどうかは怪しいとの見方だが、ともあれ女性閣僚1人の新内閣。これこそが「自民党の弱点になりつつある」と、政治ジャーナリストの角谷浩一さんは指摘する。

「陸上自衛隊日報問題の責任を取って防衛相を辞任した稲田朋美氏など、自民党は女性議員が育っていない。杉田水脈氏の問題を黙殺するなど、国民からの信頼も失っている。対する立憲民主党は参院選の大阪選挙区に擁立する亀石倫子弁護士をはじめ女性候補を増やす構えだ。唯一の女性閣僚である片山氏がまた失言でもするようなら、より参院選が戦いやすくなる」

 一方の自民党は、

「新たな候補者として箱根駅伝青山学院大学を優勝に導いた原晋監督や、元横浜市長の中田宏氏の名前が聞こえてきます。党内の一部に先日退職した貴乃花さんを推す動きもあるが、強い女性候補はいない」(同前)

 自民党は、9月20日投開票の総裁選中に「冷や飯覚悟が当たり前」(麻生太郎財務相)などの空中戦がありながらも、石破派の山下貴司氏を法相に起用。来年の参院選や安倍晋三首相悲願の憲法改正に向けて党内融和を図ったと見ることもできるが、一橋大学の中北浩爾教授(政治学)の見方は違う。

「派閥の秩序から言えば、当選3回の議員を起用するのは嫌がらせに過ぎない。党内融和ならば他派閥同様、石破派からも入閣待機組を起用したはずだ。石破派への冷遇、排除と言えます」

 待機組の「在庫一掃内閣」とも揶揄される新内閣だが、中北教授は、派閥への配慮は安倍首相の力が落ちていることにほかならないと語る。

「前回は距離のある野田聖子前総務相や河野太郎外相を取りこんだが、今回は身内で固めた印象だ。総裁選で永田町を超えた支持の広がりがないことが明らかになっても、永田町レベルの求心力強化に舵を切っている。安倍政権も苦しい状態に入ってきていると言えるのではないか」

 求心力となる憲法改正も沖縄県知事選惨敗で黄信号がともり始めている。(編集部・澤田晃宏)

※AERA 2018年10月15日号