見た目を理由にいじめられたこともない。だが、違和感はあった。視線を感じるし、自分の外見は「ふつうと違う」。似顔絵を描くとき、当時の「肌色」のクレヨンは自分の肌の色と違った。

 小学5年生の頃、1年生に呼び止められ、「どうしてそういう色をしているの」と聞かれた。下級生に悪気がないことも、純粋に聞いていることもわかった。努めて平然と「生まれつき、色素が少ないんだよ」と答えた後、保健室に走っていって、泣いた。

「ふつうになりたい」という気持ちが常にあったが、そう思うのは親に申し訳ない。気持ちの行き場がなかった。

「身体障害のほうが大変で、『見た目』は大変じゃないとみんなどこかで思っているのかも」と感じたこともある。「見た目問題」というテーマを強烈に意識したのは、大学に入ってからだ。

 見た目問題をもっと知ってほしい。11月には、学部の授業に登壇し、学生に向けて話す。堀越教授の誘いだ。今後は、キャンパスソーシャルワーカーとして働きたいと考えている。

「学ぶ機会を、ハンディを理由に誰にも諦めてほしくないんです」(神原さん)

 9月22日、さまざまな症状を持つ50人超の当事者や非当事者が、NPO法人マイフェイス・マイスタイル(MFMS)の納涼会に集まった。MFMSは、06年7月、NPO法人ユニークフェイス(2015年解散)事務局長だった外川浩子さんが実弟の正行さんと共に設立した。

「やけどや脱毛症、症状ごとに患者会はありましたが、連携していなかった。症状が違ってもぶつかる困難は同じです。非当事者であれば、どの症状ともフラットに関係が結べ、症状の垣根を越えやすいはず。当事者と非当事者の壁も越えたいと思いました」(外川さん)

 世間へのメッセージがある。見た目問題を自分ごとに考えるのは無理でも、タブー視しないでほしい。たとえば、子どもが当事者を見て無邪気に質問をしたら、どう対応したらいいか。みんなで話し合って得た結論がある。

「『そうだね、いろんな人がいるね』と言った後で、『仲良くしようね』と言ってほしい」(同)

 当事者と話し、世間の様子を見ていると、「『かわいそう』と無意識に当事者を見下しているのでは」と感じる瞬間はまだある。通りすがりにお金を渡された人もいる。

「10年前まで、世間がどれだけひどいことをしたか当事者は怒りを発信し、それはきっと必要なことでした。いまは、社会でどう生きられるかがテーマになったように思います」(同)

 当事者が自然体で等身大の自分を発信できるようになってきた。まだ、この先がある。

「仕事が続かないなら辞めてもいい。どんな生き方でも、自分らしく生きられる世界になるよう願っています」(同)

(編集部・熊澤志保)

AERA 2018年10月8日号