カープが3連覇を決めた9月26日は不運にもチケットが手に入らなかったが、広島の人たちと共に飲食店で観戦。「移住してよかった」と板倉さん(撮影/澤田晃宏)
カープが3連覇を決めた9月26日は不運にもチケットが手に入らなかったが、広島の人たちと共に飲食店で観戦。「移住してよかった」と板倉さん(撮影/澤田晃宏)

 近年、都心から地方へ移住する人が増えているようだ。東京からの移住先として人気なのは、やはり東京からのアクセスがいい関東近県。しかしそんな中で、広島県が移住先としての存在感を強めているという。

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東京・渋谷に暮らしていた板倉真弓さん(38)が移住を決意したのは、今から3年前。大好きな広島カープの近くにいたい。生活情報を集めるため、広島県が都内に出すアンテナショップに行った。そこで見つけた移住相談の案内に、これまで知らなかった広島を発見した。

「広島は大都市のイメージで、転勤ならまだしも、移住する場所という印象はなかった。相談の専門窓口が都内にあることに驚き、その足で向かいました」

 板倉さんが向かったのは、移住促進活動を手掛ける認定NPO「ふるさと回帰支援センター」(東京都千代田区)。同センターのフロアには39道府県1市の移住相談員が常駐している。資料コーナーのみも含めれば45道府県26市町村のブースがひしめき、移住希望者向けのイベントも年間485回(2017年度実績)開かれている。広島県では14年10月から県の職員を常駐させ、広島カープ人気にあやかり、今年5月には広島市と共同で元カープ選手を招いた「Cターン」フェアを開催するなど、移住推進に積極的だ。

 同センターでは移住希望者へのアンケート結果を「移住希望地ランキング」にまとめている。直近の17年の結果(回答件数8498)では東京に近い長野、山梨、静岡がトップ3を占めたが、4位は広島だった。

 高橋公(ひろし)理事長は「リーマン・ショック以降、移住者の主役がシニア世代から働く世代に変わってきている。センターの利用者は08年には7割が50代以上だったが、17年には逆転して20~40代が7割を占めています」と指摘し、こう続けた。

「働く世代は老後の蓄えで移住するわけではなく、仕事が必要。おのずと移住先はシニアが好む風光明媚な山村エリアではなく、地方都市になります。就労の場があるか否かが移住者の最大の関心事になっています」

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