イラスト:飛田冬子
イラスト:飛田冬子

 よく聞く田舎暮らしの理想と現実とギャップ。失敗だって勉強のうちだけれど、避けられる事態はなるべく避けたい。移住のプロからのアドバイスを聞いた。

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 移住のプロたちに助言を求めると、共通の答えは「事前に何度か足を運び、地元の人と関係をつくっておくこと」。

 移住・交流情報ガーデン(東京・京橋)の林光一さんが言う。

「日帰りから1カ月程度まで、多くの自治体がお試しツアーやモニター移住を実施しています。まずは何度か足を運び、四季折々の自然環境を見てください」

 自治体の移住政策立案に関してコンサルティングを行う三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員の阿部剛志(たかし)さん(41)は、自らも群馬県に居を移した移住体験者でもある。

「結局最後の決め手は“人”です。その接点を作るため、1年ぐらいかけて“旅行以上、移住未満”の滞在をして関係性をつくっておくといい」

 徳島県の移住アドバイザー・小林陽子さん(68)は、30年以上にわたり移住希望者の相談に乗ってきた。その数1千人以上。

 移住後の暮らしについて、小林さんは「移住1年目は、とにかくじっとしていて」とアドバイス。地域活性化のために、と意気込むのが、なぜだめなのか。

「それはとてもありがたいんですが、1年目は静かに暮らして様子を見てほしい。多くの場合、すでに地元で同じ思いを持って取り組んでいる人がいます。その人たちの邪魔になりかねない。それよりまず土地に慣れてほしい。水が変わり、空気が変われば、体調を崩す人もいます。方言や生活に慣れるのに1年はかかる。じっと町の様子を見ていれば、誰に何を相談し、どう動けばいいのか見えてきます。自分の立場や役割を見極め、2年目以降に動き出せばいい」

 さらに小林さんは、移住者同士で群れないで、と言う。

「留学先で日本人ばかりで集まり英語が身につかないのと同じ。移住者だけでいると、町のことがわからないまま、相談する相手を間違えてしまうんです」

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