築地市場の水産仲卸有志で作る文化団体「築地魚市場銀鱗会」事務局長で『築地市場 クロニクル完全版 1603-2018』の著者、福地享子さんは言う。

「都市開発と市場移転はどの時代も表裏一体の関係。いつの時代も魚河岸は湖面の笹舟のように、時勢に揺られて右に左に揺れ続けてきました」

 9月16日。翌月に迫った豊洲市場開場を前に、東京都は仲卸らを対象にした見学会を実施し、本誌も参加した。取り扱う生鮮食料品や用途に合わせて市場は「水産仲卸売場棟」「水産卸売場棟」「青果棟」の三つの街区に構成されている。それぞれの街区が独立しているため、市場内の移動には周回バスが使われる。見学会に先立ち、説明に立つ東京都職員に対して、参加者からはやはり安全面を不安視する声が漏れた。

 泣いても笑っても開場まであと10日。世界の「TOYOSU」と呼ばれるようになるのは、果たして何年後だろうか。10月11日、東京の新たな歴史の1ページがいよいよスタートする。(編集部・中原一歩)

※AERA 2018年10月8日号より抜粋