北海道地震の際、携帯電話の充電をしたい被災者が札幌市役所に殺到。数時間待ちの長蛇の列ができた (c)朝日新聞社
<br />
北海道地震の際、携帯電話の充電をしたい被災者が札幌市役所に殺到。数時間待ちの長蛇の列ができた (c)朝日新聞社
新田ヒカル(にった・ひかる)/スマホ評論家。スマホ決済や壊れたスマホの修理方法、充電対策などハード面にも詳しい(写真:本人提供)
<br />
新田ヒカル(にった・ひかる)/スマホ評論家。スマホ決済や壊れたスマホの修理方法、充電対策などハード面にも詳しい(写真:本人提供)
人気のパスワード管理アプリ(AERA 2018年10月1日号より)
<br />
人気のパスワード管理アプリ(AERA 2018年10月1日号より)

 就寝するとき、財布は近くになくてもスマホは必ず枕元にある、という人は多いはず。安否確認や緊急地震速報といった情報を入手するためにも、スマホは災害時に必要不可欠なライフラインだ。

【人気のパスワード管理アプリ一覧はこちら】

「ネットバンキングやネットショッピングの普及もあり、スマホがないとお金の管理もままならない人が増えています。電子マネーのSuicaやクレジットカードをスマホに登録して普段の買い物に使う人は今や定番ですね。現金払い派で普段は使わない人も、災害時に備えてセットだけはしておくべきでしょう」(スマホ評論家の新田ヒカルさん)

「アップルペイ」「グーグルペイ」「おサイフケータイ」などを利用すれば、スマホの中に電子マネーやクレジットカードを登録して財布代わりに使える。慣れた人には当たり前の機能だ。

「今回の北海道地震では道内全域が停電したため、当初は電子マネーやクレジットカードが、多くのコンビニなどでまったく使えない状況になりました。通信インフラが遮断されたり、充電切れになったりすれば、スマホはただの箱。キャッシュレス派にとって停電は大敵だということがよくわかりました」(同)

 しかし、ひとたび電力、通信インフラが復旧して

利用可能になればスマホは強い。現金が1円もなくても、かざすだけで緊急の出費に対応できる。

 スマホがただの箱にならないためにも、日ごろから充電用バッテリーの残量をフルにしておいたり、自動車からの充電が可能な車載充電器などを用意するといった対策も必要だ。さらに新田さんが指摘する災害時のスマホ活用法は、備忘録としての機能。

「スマホのパスワード管理アプリは災害時に非常に役立つ機能だと思います。ネット銀行や証券会社、保険会社にアクセスするためのパスワード、電子マネー、クレジットカードの番号、運転免許証の番号などを登録できます。こうした個人情報を登録しておけば、スマホだけ持って避難する非常事態になっても、お金の心配はしなくていいはずです。アプリの中には、一個人だけではなく、家族で共有できるファミリーアカウントを登録できるものもある。災害で家族に何かあったときに備えて利用したいですね」

 お金に関する情報も含め、パスワードを入力してネットにアクセスすれば、ある程度のことはできる時代。災害でスマホが壊れる危険を考えると、複数のパソコン、スマホ、タブレット端末間でパスワード情報を自動的に同期してくれる機能がついたものが安心だという。

「オススメのパスワード管理アプリには有料のものも多いですが、お金を払ってでも大切な情報は管理すべき、と考えましょう。複数の端末での同期機能を利用し、家族間で銀行、証券、保険などの口座番号やパスワードを共有しておけば、災害で紙ベースの情報をすべて失ったり、家族が離ればなれになったときの助けになると思います。もちろん、現金も大切ですが、現金を使い果たしたときのことを考えると、やはりスマホの決済機能も捨てがたい。どちらが欠けても困らないようにしておきましょう」(同)

 災害時の連絡や情報入手だけでなく、非常時の決済手段や備忘録としても使うことで、スマホを最大限活用する、という発想が必要なのだ。「ネットでお金を動かすなんて」と毛嫌いしているあなたも、ぜひ。(経済ジャーナリスト・安住拓哉、編集部・中島晶子)

AERA 2018年10月1日号

著者プロフィールを見る
中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。アエラ増刊「AERA Money」も担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などマネー関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

中島晶子の記事一覧はこちら
著者プロフィールを見る
安住拓哉

安住拓哉

出版社勤務を経て2021年に独立。経済関連記事全般が得意。取材・執筆歴20年以上。雑誌の取材記事の他、単行本のライティングも数多く手掛ける。

安住拓哉の記事一覧はこちら