「走れると、それだけで健康体と思い込む女性は多いのでは。でも普段体のリズムが狂うような習慣があると、健康を害すのは誰でも同じ。長く健康で、美しくいられることをモチベーションに、ランニング中は『気持ちよく走れてる?』と、体の声に耳を傾けるのがいいですね」

 そう林さんから教えてもらったところで、いよいよ実践練習だ。ウェアに着替えてランナーが多い公園に向かった。

 ところで自分が走るのは、たぶん冬以来。汗をかいているせいだと思いたいが、以前はすんなり入った気がするタイツやスポーツブラが、妙にキツい。スポーツブラにいたっては、装着している途中で、脱ぐことも着けることもできなくなり、阿波踊りのような格好のまま緊急停止。夫にブラを引っ張って助けてもらうという失態を演じてしまった。というか、そんなことよりランニングだ。

「走るポイントは大きく三つ。丹田や肩甲骨を意識すること。そして特に腰の姿勢ですね」

 まず体の重心である丹田は、地面に対して垂直になるように着地。「シューズの先がちらっと見える」前傾姿勢が基本となる。肩甲骨は大きく回し、ここからリズミカルに腕を振ってピッチを刻んでいく。お尻を落とさず、背にならないように。

 これらの重要ポイントを押さえ、準備体操をしたあとは、3人でレッツ!ランニング。

「はい、口角を上げましょう。ほっぺたが、サングラスの縁にかかるくらい思い切り!」

 林さんから何度も注意が飛ぶ。口角を上げると幸せホルモンが発生。走る苦しさから脱却するには、手軽な方法だという。

 もうひとつ、林さんが実践しているのが「ランニング瞑想」だ。こちらヨガからヒントを得たもので、時間を三つに分け、最初は「今日のこと」、次に「過去の過ち」、最後に「未来のこと」を走りながら考える。

 例えば「今日のこと」はここに来るまでの一日を回想、「未来のこと」は、「社長になる」など人生の目標でも、「このあとサウナに直行してビール」みたいなご褒美の妄想でもOK。問題は「過去の過ち」。

「私の場合は父にもっとやさしくしてあげたかったなどと考えるかもしれない」(林さん)

 自分の場合は子ども時代に飼っていた亀のことを思い出していた。冬眠させてやろうと土を掘って埋めたところ、普通に生き埋めにしてしまった。ごめん。こんな感じで老いも若きも女子はゆるゆるランニング。口角上げて! スマイル0円!(ライター・福光恵)

AERA 2018年10月1日号