「普段、主に利用しているのは金利の高いネット銀行ですが、災害でキャッシュカードを紛失したら……。住んでいる地域に店舗や窓口はなく、電話連絡するにしても大きな災害だと電話が使えるかどうかもわかりません。通常の銀行と比べてお金が引き出しやすいゆうちょ銀行に多少なりともお金を預けておいたほうがいいと思います」

 ただ、最近は災害時のなりすまし被害も増加しており、金融機関に警戒心があるのは事実。西原さんは、身分証明書を常に持ち歩くことを推奨する。運転免許証を持っていない人は、この機会に、写真入りマイナンバーカードを作ろう。

「いかに通帳やカード、印鑑がなくても大丈夫とはいえ、身分証明書がないと、引き出しは難しい。もし財布の中に運転免許証やマイナンバーカードが入っていれば、身元確認を即座に行えます」(西原さん)

 もちろん、身分証明書がまったくないまま避難を余儀なくされるケースもあるだろう。

「そんな場合でも、自分の預金口座の口座番号やだいたいの預金残高、取引履歴を覚えていれば、金融機関も柔軟に対応してくれるはずです」(同)

 必要最低限で構わないので現金を家の中に用意しておくことも大切だ。

「非常時の備えも兼ねて、家の中の100円貯金箱にお金を貯めておくのもいいでしょう。お金をジップロックに入れて冷凍庫の中にへそくりしている、という主婦の方がいますが、冷凍庫は災害時には『頑丈な箱』として機能しますし、いい保管場所といえます」(同)

 パニックに陥らないためには、災害が起こる前の予備知識と事前の準備が最も大切になる。(経済ジャーナリスト・安住拓哉、編集部・中島晶子)

AERA 2018年10月1日号より抜粋

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中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。アエラ増刊「AERA Money」も担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などマネー関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

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