丁健(ディン・ジェン)/米国に留学し1993年に「アジア・インフォ」起業、その後北京に戻り、ネットのインフラやシステム構築を行い成功。現在は後進の育成に力を注ぐ
丁健(ディン・ジェン)/米国に留学し1993年に「アジア・インフォ」起業、その後北京に戻り、ネットのインフラやシステム構築を行い成功。現在は後進の育成に力を注ぐ

 ここ数年、ITの分野で目まぐるしい発展を遂げる中国。1990年代に中国でインターネットのインフラを構築し、同国にネットの概念を持ち込んだと言われる丁健(ディン・ジェン)さんに、中国のテクノロジーの現状と今後について話を聞いた。

*  *  *

――今の中国はネットがとても発達している一方で、政府の規制でグーグルやフェイスブックなどが使えず、ゆがみがあるように見えます。

 中国は人口が多く、情報ツールの開放が社会を不安定化させると政府は考えたのでしょう。ですが中国は成熟社会に少しずつ向かっており、自信を持って寛容な姿勢で対応してほしい。規制の一方で自動運転では実用化に向け進むなど、領域によっては政府も大胆なところもあるのですから。

――テクノロジーはどう社会を変えたと考えますか。

 社会を進化させた一方で、格差拡大を加速させました。一つの会社が成功し、効率を優先させれば、勝者総取りとなり他の何千何万の会社が犠牲になります。現在、世界中でポピュリズムが問題になっていますが、その原因はよく指摘されているようなグローバル化ではなく、科学技術の発展にあると思う。中国では「解鈴還須系鈴人」(事の始末をつけるのは、やはりその原因を作った人でなければならない)ということわざがありますが、ハイテクがもたらした問題はハイテクで解決しなければいけないと思います。

――どんなふうに解決するのでしょう。

 例えばシェアビジネスやロボット。日本では労働力が足りませんが、ロボットが介護をすれば人手不足を解決できる。科学の進歩で、技術が社会問題の解決をもたらすいい例です。

(聞き手/朝日新聞編集委員・秋山訓子)

AERA 2018年9月24日号