中華食堂なら、「チャーハンに付いてくるどうでもいいスープ」はどうだ。私はあれを実力スープと呼んでいる。店が推したいメインメニューではその店の真の力は測れない。あの一見どうでもいいスープにはこの店の出汁に対する姿勢や、態度、基本理念が反映されているのである。つまり店の基礎だ。

 寿司屋なら「かっぱ巻き」「かんぴょう巻き」で見る。板長今日のオススメ品とかに惑わされてはダメだ。派手な着飾りに騙されてはいけないのである。焼肉屋ならもうお分りだろう「チョレギサラダ」である。キムチと思っただろうか。キムチはほとんどその店では漬けていないから参考にならない。肉の仕入れまで見えている人がいたらそれは「応用」であり、私が言う「基礎」とは違う。見誤らないでほしい。

 いっそこれらのレギュレーションを決めて全国模試をしてみたい。そうすれば食べログ的な指標とは違う評価軸が出来る。

 さて、ここまで書いて自分でも愕然(がくぜん)としたが、実力測定品類を見ると全てサッパリとしたものばかりであった。やはり歳重ねないと基礎の大事さはわからないと実感する。大事なことは、消化も衰え、足も細くなり、腰痛の一つも抱え、便通も悪くならないといけないということ。そうなってからじゃないと基礎好きとは言えない。若者たちにわかってたまるかというのだ。

AERA 2018年9月24日号

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マキタスポーツ

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マキタスポーツ/1970年、山梨県生まれ。俳優、著述家、ミュージシャンなど多彩な顔を持つ。子供4人。スポーツ用品店だった実家の屋号を芸名に。著書に『すべてのJ-POPはパクリである。』ほか。映画「苦役列車」でブルーリボン賞新人賞受賞。近刊に『越境芸人』(東京ニュース通信社)。『決定版 一億総ツッコミ時代』(講談社文庫)発売中。

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