●「夫は天の計りの中で大きな役割を与えられた」

 昭恵氏は特定の宗教を信仰しているわけではなさそうだ。ただ神道などに傾倒するグループは安倍政権の熱烈な支持層と見事に重なる。夫が再び総理の座に返り咲くことができた理由を昭恵氏は「天命」だと言ってはばからない。

「夫は天の計りの中で大きな役割を与えられた。だから私も、どこまでも主人の応援団になろう、と。そのためにも、私は主人に届かない声も主人に届けたい。別に主人に反発しているわけでなく、真逆の人の声も主人に届けたいと思っているのです」(前出の基調講演)

 こうして昭恵氏は「アッキー」へと脱皮した。この「変革」が、圧倒的な自信に満ちあふれた彼女の行動力の源泉となる。すべては天の計らい。そう信じることでしか、歴史の文脈も科学的な知見も軽々と飛び越えるあの“アッキー節”は理解できない。

 越えられなかったのは「子どもがいない」という強烈なコンプレックスだったのか。以前、地元・下関の後援者に、子どもがいないことを理由に「あんたは昔だったら、追い出されとる」などと言われて傷ついた過去を本誌(16年8月8日号)に告白している。

 こうした昭恵氏が抱える女性としてのコンプレックスを、やはり「自信」へと転換させたのは、彼女を「メンター(人生の指導者)」として慕う若者との出会いだった。

 手元に一枚の名刺がある。自宅と書かれた欄には「東京都渋谷区富ケ谷──」。その下には「090」から始まる個人のケータイ番号とメールアドレス。この住所の家主は内閣総理大臣・安倍晋三。名刺の持ち主は昭恵氏である。

 この名刺を見せてくれたのは、本県に暮らす30代の男性起業家。昭恵氏と出会うきっかけは「世界一周学校」という、起業家や冒険家、アーティストなどが参加し、ワークショップなどを行うイベントだった。この起業家は、自分の親よりも年の差があるのに、初対面の時から友達感覚で親しげに接してくる昭恵氏に驚いたと語る。

「昭恵さんは『自分を利用して』と言っていました。『自分はつなぎ屋』だと。自分がビジネスを通じて、社会にこう貢献したいと夢を語ると、ある有名なコンサル会社の社長を、その場で紹介してくれました。すべてがその調子なんです。だから昭恵さんと知り合うと、それまで動かなかったプロジェクトが動いたり、考えもしない出来事が起こる。毎晩のようにSNSで連絡を取り合い、彼女をメンターとして慕う若者もいます」

次のページ