竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
若いころに時間を大事に使う習慣をつけることが大切です(写真:gettyimages)
若いころに時間を大事に使う習慣をつけることが大切です(写真:gettyimages)

「コンビニ百里の道をゆく」は、49歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。

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 新年度のスタートから、約半年。新社会人の皆さんも、そろそろ「仕事とは何か」「働いてお金を得るとはどういうことか」などを、実感を持って考え始める時期かもしれません。そこで今回は、私なりに「仕事とお金」についてお話ししたいと思います。

 仕事に求めることは、「やりがい」「自己実現」でも、それこそ「給与が高い」でも、何でもいいと思います。私は、学生時代に勉強もスポーツもナンバー1になったことがなかったので、「業界トップの企業で自分を試したい」と思って就職活動をしました。結果、三菱商事に内定をもらい、畜産部に配属されました。

 この連載でも言いましたが、私は海外を飛び回って派手な取引をする商社マンではなく、スーパーで実演販売をしたり、30代半ばで広報部に異動したりと、様々な経験をしました。

 若いころは、赤ちょうちんの居酒屋で毎晩飲んでいたので、お金は全然ありませんでした。お金よりも、「自分が有意義な、あるいは楽しいと思える時間の使い方をしているかどうか」を大切にしていました。1日の大半、“ナンバー1”を目指して(何が“ナンバー1”なのかは不明なのですが……)がむしゃらに仕事をしていましたので、仕事に費やす「自分の時間」は、絶対に納得できるものにしたいという思いが強くありました。

 自分の大切な時間を提供するのだから、それに見合う対価は必要です。でも、その対価の多寡にかかわらず、自分の貴重な時間を納得して過ごせているか、有意義な使い方になっているかが、すごく大切なことだと思うのです。

 米シリコンバレーの若い経営者たちは、サービスや商品で社会を変える「その瞬間」を夢みて仕事をしていると言います。巨万の富を得たスポーツ選手でも「まだ勝ちたい」という思いから、厳しい現役生活を続ける人は多くいます。

 仕事への価値観は多様で、正解はありません。でも、若い社会人にこそ、対価を得る「時間」の使い方を大事にしてほしいと思っています。

AERA 2018年9月24日号

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竹増貞信

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竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長

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