「日本にいるからといって、外国人の誰もが完全に日本語を理解できるとは限らない。特に漢字は、外国人にとって非常に困難。自治体は少なくとも英語で、可能なら多国言語で情報提供してほしいと思う」


 
 実際は、日本の自治体の多くが、すでに在留外国人を念頭に多言語での情報提供をしている。英語、中国語、韓国語の3言語はもはや基本だ。デアさんが暮らす枚方市も「外国人のための枚方生活ガイド」を冊子にまとめ、スペイン語やポルトガル語、ベトナム語も含む計6カ国語で発行。防災マップや避難所の位置などを含む緊急防災情報は、冊子の冒頭に掲載されている。ただ、情報発信は一方通行で、通常の市役所の代表番号などしか載せておらず、外国人専用の電話の窓口があるわけではない。大阪府の通訳サービスと連携して対応できる場合もあるというが、冊子には、緊急時の日本語での問い合わせ方法が載っており、あくまでも日本語の理解が前提になっているようにもみえる。
 
 最大震度7の巨大地震に襲われた北海道では、外国人観光客や在留外国人も被災した。北海道庁は地震発生当日の6日、英中韓の3言語で相談を受け付ける臨時電話窓口を開設。避難所や給水所などの情報提供のほか、それぞれ個別の相談にも乗っている。気象庁は緊急地震速報や津波警報などで使用される単語を多言語に翻訳した辞書を作成したり、ホームページで台風や地震などの災害情報を英語で詳細に発信したりしている。日本政府観光局や各自治体、民間のNGOなどを含めると、外国人向けの情報発信はたくさんあるのだ。
 
 こうしたサービスが存在していることを知らない外国人が圧倒的に多い。外国人が日常生活で頼る日本人の友人らも存在を知らないため、発信した情報が、肝心の外国人まで届いていないのが現状だ。いかに外国人に直接情報を伝えるのかの試行錯誤が続いている。
 
「様々な警告が携帯に届くが、漢字だらけで理解不能。もし避難命令が出ても、何が起きているのか理解できず、私は取り残されると思う。どこへ避難していいのかも分からない」
 
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日本人の助けがないと孤立する