「そもそも憑依型の人がいるのかも分からないですけれど。手をつくして現場に入るまでに準備をし、それらを現場で混ぜて。あとは、出たところ勝負という開き直りもありますね」

 しっかり準備をすれば、後悔はない。失敗するということは準備が足りなかったということ。

「現場に行く前に、家で地味に準備をしていますよ。台詞をひたすら読んで、声に出して。役者って華やかに思われがちですし、実際に華やかな方もいらっしゃいますけれど、みんな家では真面目にやっているんです(笑)」

 作品における自分の存在意義のようなものも、常に意識しているという。物語のなかでの役割はもちろん、何曜日の何時にどの枠で放映されるのか。そうした媒体の特性まで。朝ドラで言えば、「朝だから視聴者には癒やされてもらいたいな」という思いが当初からあった。

 今週から3カ月ぶりに再登場する「半分、青い。」では、初登場から20年後の正人が描かれる。正人は、ともすると“いい加減”と言われかねない役だが、不思議とどこか憎めない存在だ。「変わったな」というところと、「相変わらずだな」と思えるところ。視聴者がクスッと笑えるようなニュアンスを残した。

「『役』という言葉は、『キャラクター』という意味と『役割、役回り』という言葉から構成されていると思っていて。『誰に何を渡して』というのを理解していないと精度が下がると思うんです」

(ライター・古谷ゆう子)

AERA 2018年9月10日号より抜粋