東京高裁ではさまざまな専門家に意見を求め、4年かけて検討した結果、「鑑定結果は信用できない」と結論づけ、静岡地裁の決定を取り消した。ただ、釈放については「年齢や健康状態などに照らすと、逃走等の危険性は乏しい」として、取り消さなかった。

 今度は袴田さんの弁護団が、最高裁に不服を申し立てた。

 刑事事件の裁判には、無実の人が死刑になることを避けるために「疑わしいときは被告人の利益になるように判断する」という原則がある。袴田さんの場合はどうだろう?

 事件発生からすでに52年。袴田さんは長い拘置所生活で精神を病み、会話もままならない。それでも、再審が始まるかどうかすらわからない状況が今後もしばらく続く。(解説/朝日新聞社会部・杉浦幹治)

【事件発生から52年 袴田事件】

1966年6月 みそ製造会社の専務など一家4人が殺され、家に放火される
   8月 袴田さん逮捕(袴田さん30歳)
 67年8月 会社のみそ工場のタンクから血の跡がついた衣類が見つかる
 68年9月 静岡地裁で死刑判決
 80年11月 最高裁で死刑が確定(44歳)
 81年4月 袴田さんが1度目の再審請求(45歳)
 94年8月 静岡地裁が1度目の再審請求を退ける(58歳)
2008年3月 最高裁が1度目の再審請求を退ける(72歳)
   4月 袴田さんが2度目の再審請求
 14年3月 静岡地裁が再審を認める。袴田さん釈放(78歳)
 18年6月 東京高裁が静岡地裁の決定を取り消す(82歳)
  現在  最高裁の判断へ
(注)再審請求(裁判のやり直しを求めること)は何度でもできます。

※月刊ジュニアエラ 2018年9月号より

ジュニアエラ 2018年 09 月号 [雑誌]

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杉浦幹治
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