記者が出品した48商品(AERA 2018年9月10日号より)
記者が出品した48商品(AERA 2018年9月10日号より)

「3週間で5万円売れた」「不用品を処分して家族旅行に!」。ネット上にあふれるメルカリ利用者の声。そんなうまい話が本当にあるのか。30歳の男性記者が、家にある不用品を片っ端から出品してみた。

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メルカリの取材をすることになり、まずは自分でも体感してみようと家にあった不用品を出品した。

 最初に買い手がついたのは、9千円で出品した一眼レフカメラの入門機。5年ほど使い倒したために傷・汚れが多く、不具合もあったので「準ジャンク品」として出品した。出品直後に2千円の値引きを求めるコメントが付き、どうしたものかと悩んだが、わずか数分後、別の人が提示価格で買ってくれた。

 半分壊れた中古カメラを、どんな理由で購入したのだろう。出品しておきながら不思議に思い、恐る恐る取材の趣旨を明かして、話を聞かせてもらえないかとお願いしてみた。

 新宿の待ち合わせ場所に現れたのは17歳の男子高校生だった。カメラが趣味で、ボディーもレンズもいくつも持っている。実は今回購入した機種も愛用しているそう。では、なぜ?

「いま持っている機材は、シャッター回数がかなり多くなってきています。このまま使い続けるよりも壊れる前に売って、別のより状態のいい機材を手にしたかった」

 機種にもよるが、一眼レフカメラの入門機はシャッター5万~10万回が「寿命」とも言われる。この高校生は、自身や前の持ち主の撮影枚数を考えるとそろそろこの回数に届きそうなため、買い替えを検討していたという。とは言え、私が出品したものも十分古いし、「内蔵ストロボが起動しない」という不具合もあった。

「割とよくある不具合で、自分で簡単に直せると思ったし、実際に直せました。シャッター回数も、使用年数を考えると僕の手元にあるものより少ないだろうと思いました」

 いま手元にある機材はメルカリで売り、同じ機種の多少状態がよさそうなものを安く購入する。また少し経ったら、今回購入したカメラも同じように売って次を探すという。

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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