●私の活用法(2)


エルメスは思い入れごと譲りたい

 これまでメルカリで売買された商品で最も高額だったのは、ダイヤモンドのルース(裸石)で315万円(7月2日発表)だ。ほかにも高級時計や自動車、バイクなどが100万円を超える高値で取引されている。

 一般的に、高額商品は質屋や専門の下取り店に持ち込む人が多いと言われる。高額商品をメルカリで売る人は、どんな思いで出品しているのだろうか。

 商社経営の夫、3人の子どもと都内で暮らす女性(38)は1年ほど前、高級ブランド・エルメスの「ケリーバッグ」を一つ、「バーキン」を二つ、メルカリで売った。三つの売上総額は260万円を超える。

「10年ほど前に買って、ほとんど使わずに持っていたものでした」

 きっかけは、目の前にあった不用品を、何の気なしに出品したことだった。

「最初はバッグブランド、コーチのノベルティーでいただいたコップ。写真を撮って適当に値段をつけて出品したら、冗談ぬきで数十秒で売れたんです。ならば、とあたりを見回したら、ずっと使っていなかったシャネルのピアスが目に入った。これもまた数十秒。当たり前ですよね。相場も調べずに、千円で出したんですから」

 いくらでもよかったんです、ゴミにするよりはね、と女性は笑うが……。シャネルのピアスが「不用品」とはうらやましい限りです。

「目の前から不用品が消えていくのが気持ちよくなった」といい、その後はパン焼き器、お歳暮の残り、子ども服……と手あたり次第に売りまくった。取引件数が100件を超えたころ、エルメスを出品した。

「人気ブランドだし、直営店で買ったので保証書もあるけど、質屋に売ったら元の半額程度ですよね。不用品とはいえ私には思い入れのあるものなので、それなら自分でメルカリに出品して、直接コミュニケーションをとりながら本当に欲しがっている、大事にしてくれそうな人に譲りたいと思ったんです」

 メルカリには、売り手と買い手がメッセージをやりとりする機能がある。また、売買が終わると互いに評価し合うので、過去の取引でどんな評価を受けたかも確認できる。

「評価欄をさかのぼれば、その人がどんな人なのか、だいたい見えてきます」

 買う人の顔が見える、手触り感のある取引。そんな「フリマ感覚」が、メルカリで高額商品を売る理由という。(ライター・浅野裕見子)

AERA 2018年9月10日号より抜粋