米中間で勃発した「貿易戦争」に、世界中が巻き込まれようとしている。なぜこうなったのか? 毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された、朝日新聞GLOBE副編集長・五十嵐大介さんの解説を紹介しよう。

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 トランプ米大統領は7月6日、中国がアメリカの技術を不当に奪っているなどとして、中国からアメリカに輸入される製品340億ドル(約3.8兆円)分に高い税金(関税)をかけ始めた。トランプ氏はさらなる関税をかける姿勢を示す一方、中国側も仕返しに踏み切り、世界の二大経済大国である米中が「貿易戦争」に突入した。

 対象はハイテク製品や電子部品など818品目で、25%の関税を新たにかけた。第2弾として、160億ドル分の輸入品にも高い関税をかける方針だ。

 さらにトランプ政権は7月10日、中国からの輸入品2千億ドル(約22兆円)分に高い関税をかけるとして、6031品目を発表した。農産物や衣類など身近な製品を含む幅広い品目が対象で、10%の関税上乗せを検討し、8月末以降に判断するという。実施されれば、高関税の対象は約2500億ドルと、中国からアメリカへの輸入総額の約半分にのぼる。アメリカの消費者にも影響は大きい。

 これに対して、中国側も反撃に出た。7月6日、アメリカからの輸入が多い大豆や食肉、自動車など545品目に、アメリカと同額の輸入品340億ドル分の高い関税をかけた。

 トランプ氏が貿易分野で強硬姿勢に出るのは、今年11月の中間選挙に向け、支持者にアピールをしたいからだ。トランプ氏は2016年の大統領選挙で、「中国やメキシコから安い製品が入ってきて、仕事を奪っている」と主張。製造業が衰退したラストベルト(さびついた工業地帯)と呼ばれる中西部の州で白人労働者らによる支持を伸ばし、勝利の原動力となった。

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五十嵐大介
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