人から人へ。フリマアプリの登場で、商品はバトンのようにひとりの消費者から次の消費者へと渡っていく(撮影/今村拓馬)
人から人へ。フリマアプリの登場で、商品はバトンのようにひとりの消費者から次の消費者へと渡っていく(撮影/今村拓馬)

 利用したことはない人でも、一度は耳にしたことがあるであろう、フリマアプリ「メルカリ」。サービス開始時から着々とユーザーを増やし、今では時計修理、梱包資材など周辺市場にも影響を与えている。そんな新しいお金の動きをアエラ編集部では「メルカリノミクス」と名付け、その裏側に迫った。

 メルカリノミクスを生み出すもととなっているのは、個人個人の、消費行動の変化だ。

 普段、中学生の娘と共同で、洋服などをメルカリで売買している40代の男性。

 ショッピングモールで買い物中、「乗るだけでやせられる」が売りのダイエット器具を5万円で入手できるという状況になったという。

「メルカリで調べたら、4万8千円で取引成立していた。もし効果がなくても、実質負担はたったの2千円と考え、即決で購入しました。普通だったら効果があるかどうかもわからないものに5万円は出せない」

 まさにメルカリがなければ生まれていなかった消費の例だが、売る時のことを考えた「買う前メルカリ検索」はすでに根付き始めている。山本准教授らの調査では、ミレニアル世代のフリマアプリ利用者では61%もの人が「新品を購入する前に、フリマアプリで売値を調べた」と回答した。

 メルカリユーザーの30代男性も「買い物のときはリセールバリューを意識している」という。

 これまでに売ったものは、オールデンの革靴、ヴァレクストラの革財布、ループウィラーのスウェットなど。いずれも同世代の間で人気が高く、購入価格の4~5割で売れることが多いという。21万円程度で買ったモンクレールのダウンジャケットは13万5千円で売れた。

「元値が多少張っても、ブランド力があるものなら飽きたときに売れるので安心感がある。ひと通り使って満足したら、なるべく旬のうちに売りたい」

 他者に売ることを意識して商品を購入する行為は、車や不動産などでは以前から見られたが、フリマアプリの登場で洋服や化粧品などにも広がった。

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