「結果を出しながらも理不尽な扱いに苦しむ選手や指導者が、世間に訴えなければ協会は自律的には変われないと気づくきっかけになった。外圧がないと変わらないし、外圧があれば変えられるかもしれないことに気づいたのではないか」(宗像さん)

 外に声を上げれば、彼らの痛みを社会も支持してくれた。「MeToo」運動や、セクハラ、パワハラへの意識の高まりも後押しした。宮川選手も会見で「協会に変わってほしい」と訴えた。

 選手の行動を支えるのが宗像さんら弁護士の存在だ。今年あった日本大学アメリカンフットボール部の選手の会見、「日本ボクシングを再興する会」の会見、そして宮川選手の会見には、いずれも弁護士が同席している。

 宗像さんによると、「選手が法律家の助力を得るのは、Jリーグ発足から流れができた」という。プロ選手は、ドーピングのトラブルや待遇面などを巡って、チームの利益と選手の利益が対立する局面で個人的に弁護士のサポートを受ける。

 企業スポーツなどアマチュアが中心だった日本では、チームと選手が一体化し、チームがよければ個人もよしとされてきた。だが、プロ化によりチームと対等に選手個人の利益も守られるべきだという考えが浸透し、弁護士もチームだけでなく、個人の弁護をするようになった。

「芸能界でも能年玲奈(現・のん)さんの事務所問題など、個人が弁護士の助力を受けて権利を主張する場面が多くなった。スポーツ界も後追いしているようだ」(同)

 アスリートが自分の利益を守るために弁護士の力を借りる時代になった。だが、攻防の果てに全員が傷つき朽ちてしまうことは避けなければいけない。競技団体の内部改造を進め、ガバナンスを監視する第三者組織の構築を進めるなど、対応が必要だ。18歳の勇気をつぶしてはいけない。(ライター・島沢優子)

AERA 2018年9月10日号