生命力にあふれたペンギンたちに感動すればするほど、南極という類いまれな自然環境を破壊している人類の現状を考えさせられる。どんな解決策があるのか。野生動物が生き続けられる地球に私たちは住んでいるのだろうか。

◎「皇帝ペンギン ただいま」
米アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞した前作「皇帝ペンギン」(2005)の続編。全国順次公開中。

■もう1本 おすすめDVD「きつねと私の12か月」
 白く厳しい世界である南極を舞台にした「皇帝ペンギン」の対極にあるような、豊かな色彩にあふれる自然を舞台にしたのが、ジャケ監督の「きつねと私の12か月」。フランス・アルプス地方の四季を背景に、野生のきつねと少女の一年を追いかけた作品だ。

 フランスの山深い村に暮らす少女・リラは、ある日、学校帰りに野生のきつねに会う。とび色の毛皮におおわれ、つぶらな瞳を持つきつねに、リラは恋に落ち、「テトゥ」と名付ける。警戒心が強い野生のきつねは、なかなか姿を現さないが、リラは毎日、森へと通う。春がやってきて、母親になったテトゥに再会するリラ。少しずつ慣れてきたテトゥに、リラはしてはいけないことをしてしまう……。

 動物行動学者でもあるジャケ監督は、や狼、さまざまな森の動物も描きだす。きつねに夢中になるリラを通じて、自然とはなにか、自然が人間を惹きつけるのはなぜか。そして人間が守るべき姿についても、静かに示してくれる作品だ。

◎「きつねと私の12か月」
発売元:コムストック・グループ
販売元:ポニーキャニオン
価格3800円+税/DVD発売中

(ライター・矢内裕子)

AERA 2018年9月3日号